トラピストの問題。今時、出家する若者がいるのか?
あなたの周りにお坊さんはいらっしゃいますか?その方はお寺出身ではなく、一般の世界から出家してお坊さんになった方ですか?恐らくそういう方は稀でしょう。かなり少ないと思います。私の周りには一切いません。同じことが修道院でも起こっています。
まずはこちらを御覧ください。トラピスト修道院のオルヴァルについて書かれています。近年オルヴァルの評価はうなぎのぼりで、需要も年々増加しています。それに合わせて生産量も2002年に4000klだったのが、2012年の段階で7000klまで増えました。確かにオルヴァルは素晴らしいビールですから、その評判は正しいと思います。しかし、もう限界です。のっぴきならない問題も発生しているのです。
トラピストビールとして認定されるには幾つか要件を満たさなければなりません。国際トラピスト会修道士協会に加盟していることが大前提であることは以前の投稿で示したのでご覧ください。その他の条件については国際トラピスト会修道士協会のHPに記載があります。条件の一つに「修道院の僧侶によって、もしくはその監督下で作られなくてはならない」というものがあります。需要が増えてきて、これが問題になってきています。大半の方が70歳を超えているそうで、僧侶の高齢化が進んでいます。若手が入ってこないのでどうしようもなくなってしまっているのです。今時、出家する敬虔な若者はいないのですね・・・日本も同じでしょうが。
宗教生活の一環で行っているビール醸造がその生活自体に影響を与えるようでは本末転倒です。オルヴァル修道院のHPでも語られているように、もう限界まで来ていて出荷調整もしています。装置産業でもあるビール醸造ですから、設備を増やして僧侶以外の人間をもっと動員すれば増産は可能でしょうが、それではいけないのです。
ビールはお酒ですから嗜好品として好きに愉しめば良いでしょう。しかし、生活や信条、思想も反映していてお金と引き換えにはできないものでもあるのだと改めて思います。売れれば良いというものでもないわけです。