世界一のビアパブに行ってきました!(うちのめされた編)

アメリカのビール評価サイト”ratebeer“では毎年その年の最高のビールや醸造所、ビアパブなどを発表しています。前年の評価を翌年1月か2月に発表するのが通例で、2015年のものが先日公開されました。ratebeerによる「世界最高のビアパブtop50」はこちらです。100点のお店は世界に6軒だけで、全てヨーロッパです。日本では東京・両国の麦酒倶楽部ポパイさんが唯一ランクイン。32位に入っています。

昨年10月にベルギーに行ってきた際、100点の評価を得たビアパブの一つ、In de Verzekering tegen de Grote Dorstに行ってきました。ランビックというベルギー独特の酸っぱいビールを世界で一番揃えているお店です。以前から行きたくて行きたくて仕方なかったところで、遂に訪問することが出来ました。ブリュッセルの中心からバスを乗り継いで一時間弱の郊外Eizeringenにあり、日曜日の昼間10:00〜13:30、3時間半しか営業していません。隣に教会があって、その礼拝に合わせてオープンしているのです。

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お店には11時頃着いたのですが、すでに満席で奥のカウンターで立ち飲みとなりました。酸っぱいビールが好きで遥か彼方の日本から来たのはもちろん私一人。完全アウェーです(笑)ちょっとビビリながら、最初はTimmermansのドラフトをグラスで。うまい。

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timmermans

老舗の風格がそこかしこに漂っています。古い空き瓶や内装、そしてそこに集まる人が醸し出す空気が本当に素晴らしい。穏やかな時間と空間は本当に良いものだなぁ、と心の底から思います。後ろではロードバイクで乗り付けてきたサイクルジャージ姿の若者たちが大瓶のランビックを飲みながら談笑していたり。地元の奥様方が4人テーブルを囲んで楽しそうにおしゃべりに興じています。誰ひとりとして難しい顔をしている人はいないのです。うんうん唸りながらテイスティングなんて誰もしていない。お客さんは基本的に地元の人がほとんどで、いつもの場所にいつも通り来て、いつものお酒と共に素敵な時間を過ごしています。

カウンターでたまたま隣に居合わせた初老の男性と話をしました。私が「こんなに素晴らしいランビックが揃っているお店が近くにあっていいですね。日本にはこんな場所はないですよ。羨ましい。」と言うと、「そうかい?何十年も通っているけれど、いつも通りいきつけのお店で地酒飲んでるだけさ。」とさらっと答えてくれました。日本人の私からすれば、当たり前のレベルが高すぎてついていけません・・・

ふと思ったのです。

こちらのお店はランビックの品揃えが世界一であることは間違いありませんが、それだけで評価するのは間違いでした。「最高のお酒が気取らずに楽しめる、最高の街場の飲み屋」というスタンスを一切崩していない点が本当に素晴らしい。黙っていても抜群に美味しいお酒が出てくる安心感。そこが担保されているのだから、あとはただただゆっくり仲間とおしゃべりしながら愉しめば良いわけで。ガツガツと今までに飲んだことがないランビックを片っ端から試してやろうと鼻息荒く意気込んで来た自分がなんだか恥ずかしくなりました。本当にせこかったなぁと反省するのです。お酒を楽しむということはそういうことではないのだとうちのめされたのでした。

もしこのお店に行くのであれば、ただただ無駄に時間を過ごしにいくことをお勧めします。あの空気を吸いに行く、ただそれだけで価値があります。なんとなくビール飲んで、ぼんやりしてください。最高の贅沢がここにあります。

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この日はきれいに晴れて、本当に気持ちの良い日でした。人には人格があって、お店には店格があるのです。超一流の店格に触れることが出来、心の洗濯が出来たような気がします。ratebeer最高ランクのビアパブはもはやビールは全く関係ないレベルに到達していたのでした。それが分かっただけで幸せです。絶対また行かなくちゃ、あの空気を吸いに。

酸っぱいビールを求めて世界中からここにビールファンが集まってきます。そこで出会った方との話はまた次回に。