出版までの道程2 即売会に出まくって書きまくった

2019年の夏、コミックマーケットに成り行きで出ることになりました。時はコロナ禍直前、コミックマーケットが大きく盛り上がった96回目で、4日間で73万人来たそうです。用意していた100冊は完売し、初めてのサークル参加は大成功に終わりました。

私は業務用の酒販店を営んでおり、家庭用に店頭小売は一切していません。自分で作ったものを対面で直接お渡しできるということは純粋に嬉しく、そして楽しく、しばらく忘れていた感覚を思い出させてくれました。その気分に乗せられて冬のコミックマーケットにも申し込み、また筆を執ったのでした。そして出来上がったのが「文脈とビール」です。

こういう即売会に出るようになって思うのは「締切がないと書き上げることは出来ない」ということです。日々ぼんやりと色々なことを考え、ビールを飲んでもまた色々と考えます。そうやって頭に浮かんだ何かはふっと立ち現れてはすぐに消えていく、とても儚いものです。「あ、今のは良いアイディアかも!」と思ってメモしても、前後の思考過程が見えていないと読み返しても自分のことながら全く分かりません。そうやって日々忘れてばかりなので、催事への参加という締切を作って強制的に思考を働かせることが生来怠け者の私には必要だったようです。

そうして締切を作ると思考が鋭くなると言いますか、時間が無いことで集中せざるを得なくなります。そこで普段クラフトビールについて何気なく思っていたことを貯めてあるメモや読んできた本からインスパイアされたものなどと結びつけて書いていきます。短い時は1〜2万字、多いと10万字程度にまとめます。あるテーマに対してそれなりのボリュームにまとめる経験も今にして思えばものを書くということの基礎体力になったのかもしれません。

私には絵心が全く無く、文章しか書けないので漫画やイラストの即売会には出られません。こういう即売会のジャンル分けで言うと私の書いているものは「情報・評論」というものになりますが、このジャンルで出られるイベントはそれほど多くないというのが現状です。コミックマーケット、コミティア、文学フリマなど数えるほどです。機会がそれほど多くないと分かったので、以後出られるものには片っ端から出ることにしました。詳細はこちら

その結果、2019年の夏から2025年までにこれだけ参加し、新作を書いては発表してきました。前半は異常なスピードで量産していますが、コロナ禍で酒屋として暇だったというのも大きいです。

2019.8 コミックマーケット96 クラフトビールの今とこれからを真面目に考える本
2019.12 コミックマーケット97 文脈とビール
2020.2 文学フリマ東京 アメリカのクラフトビールをダイバーシティという視点で読む
2020.12 コミックマーケット99 ビールとまなざし
2021.5 COMIC1 ビールのスタイルと多様性、感性と言葉
2021.6 COMITIA136 クラフトビールと地ビール、流通と地域について
2021.9 COMITIA137 クラフトビールを仕事にしたいと思った時の業界俯瞰図
2021.11 おもしろ同人誌バザール Hard Seltzer And Japan
2021.11 COMITIA138 クラフトビールのマーケットシェア1%は本当か?
2022.2 COMITIA139 ビール屋から見た日本のシードルの風景について
2022.5 COMITIA140 飲んでいないクラフトビールについて堂々と語る方法
2022.8 コミックマーケット100 Beyond Beer クラフトビールのこれからを考えるヒント
2022.9 COMTIA141 文脈とビール2
2022.11 おもしろ同人誌バザール@神保町 クラフトビールの本音と建前、その次のこと(クラフトビール プロレス化論 改題)
2022.12 コミックマーケット101 クラフトビールの諸相 クラフトビールを起点とした人と社会に関する論考集
2023.5 COMTIA144 それほどガチらず、なるべくラクして美味しいクラフトビールが飲みたいんですけど、なんとかなりませんかね?
2023.8 コミックマーケット102 お金で買えるビール 買えないビール
2023.9 クラフトビールの今とこれからを真面目に考える本 改(2019年のものの大幅改訂版)
2023.12 コミックマーケット103 サシノミ
2024.3 めしけっと サシノミ2
2024.5 文学フリマ東京 クラフトビール文献読書会活動報告書 2024年4・5月 発足記念号
2024.8 コミックマーケット104 クラフトビールを仕事にしたいと思った時の業界俯瞰図 2024年版
2024.8 COMTIA149 サシノミ3
2024.11 おもしろ同人誌バザール@神保町 クラフトビール文献読書会2024年6〜8月 第2号
2024.12 コミックマーケット105 ビール片手に僕はこんな本を読んだ
2025.3 関西めしけっとin東京 クラフトビール文献読書会2024年9〜12月 第3号

振り返ってみると、我ながらよくやったものです。しかし、クラフトビールなるものを記述し切ったという感覚は全然なく、描ききれていない領域の広さを更に意識します。ショボい自分の筆力にうなだれるのでした。そんな劣等感が「次こそは!」という意識に繋がり、20作以上作る原動力になったと思います。とはいえ、いつもギリギリまで粘る癖はどうにかしないと・・・

続く

【お知らせ】
KADOKAWAの新書レーベル「角川新書」から「クラフトビール入門 飲みながら考えるビール業界と社会」を8月10日に上梓致します。こうした幸運に恵まれたのも皆様に読んで頂き、ご指導頂いたお陰です。心より深くお礼申し上げます。

本書ではこれまでのクラフトビール本とは異なったアプローチでクラフトビールという文化現象について綴っております。クラフトビールの本にもかかわらず個別具体のビールを取り上げてご紹介してはいません。クラフトビールというものが具体的に存在するわけではない、つまり「クラフトビールというビールはない」のであり、あるのはイメージだということを説明するのがこの本の目的の一つだからです。その上で、クラフトビールを液体ではなく文化現象として描き出し、「ビールと私」という閉じた系からコミュニティ、社会へと開いた系へと転回していくことを提案したいと思い、筆を執りました。本書を手に取ってくださった方が素敵な一杯に出会う手助けになってくれることを心より願っております。

現在、下記で予約受付中です。また、お近くの書店で「ISBN:9784040825410 クラフトビール入門 飲みながら考えるビール業界と社会」とお伝えすれば予約・取り寄せも可能です。ご拝読賜りますようお願い申し上げます。

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