ケグのトータルソリューションとその実例について

Dec 12, 2017

今日のトピックはブルワリーや酒販関係者の方向けになります。ビールがお店で提供される前にどのような流通をしていて、それをどうすれば効率化出来るのか?というお話です。日本におけるクラフトビールシーンは現在進行形で発展していますが、まだ具体的にこういう話題が上がって来ないのかもしれません。しかし、ブルワリーが更に増え、そしてマーケットシェアが上がってきた時には必ず直面する問題で、遅かれ早かれ考えなくてはならないでしょう。

アメリカにMicroStar(マイクロスター)という会社があります。 この会社は300万本ものケグを所有しており、その貸出、回収、納品、洗浄、メインテナンスの全てを受け持ってくれる素敵なサービスを展開しています。正にトータルソリューション。このようなサービスを行っている会社はいくつかありますが、マイクロスターが北米最大手です。概要は公式youtubeアカウントに動画で説明されているので見てみましょう。(字幕が出せるので是非ご利用下さい。) ※ここでは伝わりやすいと思って貸出やレンタルという表現をしていますが、マイクロスターは”pay-per-fill”と表現していて厳密には”rental”ではないとしています。

アメリカの話ではありますが、今後日本でも似たようなことが考えられますので是非参考になさって下さい。dogfish headのオーナー、サム・カラジオーネ氏のこのサービスに関するインタビューもありますので合わせてご覧ください。

さて、上記も踏まえた上でケグとその物流について色々と考えてみましょう。

①そもそもブルワリーはケグは買うべきなのか?

クラフトビールが人気になり、ケグ詰めビールの出荷量が増えて来ると今までの数では足りなくなってきます。そこで新規でケグを購入しなくてはならなくなるわけですが、冷静に考えるとケグの購入とは「ビールが売れる前にキャッシュが出ていく先行投資」です。1個や2個ではありませんから、一度に相当な額のお金を支払うことになります。まずここが痛い。開業時であれば樽洗浄機などの什器も必要になりますから更に出費は上がります。

②よくよく考えると、ビールの需要には季節変動がある

ビールの需要には季節変動がありますから購入したケグが余る時期もありますし足りなくる時期もあります。全て自前で賄おうとすると繁忙期に合わせた本数が必要になりますが、①で指摘した通り相当なお金が必要です。理想なのは「必要な時に必要な本数あること」。資産でもあるケグを過剰に購入して遊ばせておくのは得策とは言えません。

③ケグがいつの間にか無くなる

アメリカでは通常いわゆる正販三層の仕組みでビールが流通していますから、ブルワリーからの納品は各州にある問屋(wholeseller)となります。そこから酒販店(retailer)、そして飲食店に出荷されます。さて、出荷されてから自社のケグがちゃんと返ってくるのかどうか?これが結構大きな問題です。ebayなどで勝手に転売する人もいるそうですし、何らかの理由で行方不明になってブルワリーに返って来ないケグが全体の5%にもなるというデータもあります。
ある程度本数が溜まってから出ないと返却するコストが高く付きますからちゃんと問屋まで戻ってきていてもブルワリーにはすぐ届かないこともしばしば。流通の上にある未返却ケグも実は結構あります。

④リペアの必要性

出荷後どのような扱いをされているかは正直なところ分かりません。乱暴に放り投げられて口金が曲がっているかもしれませんし、テープや送り状を側面に直接貼られてしまうこともあるでしょう。暑い時期だと口金にカビが生えている可能性もあります。ちょっと忙しいタイミングだとスピアバルブを抜いて分解洗浄をしないかもしれません。普段あまり意識されることのない部分かもしれませんが、こういう部分をちゃんとしておかないと美味しいビールを美味しい状態で提供できませんから、ケグのリペアは実は結構な業務コストがかかったとしてもしなくてはなりません。・・・丸投げ出来たら楽ですよね?

⑤保管場所の問題

繁忙期と閑散期の差が激しく、閑散期には多数のケグが返却されてブルワリーの一角に山積みになっていることもあるでしょう。その分タンクを1本でも増設できたら生産能力が上がりますし、そのスペースに併設タップルームを設置することも出来るかもしれません。オンデマンドに必要な分だけ必要な時に手に入ればそれも可能、というわけです。

・・・諸々の問題を一気に解決してくれるサービスがマイクロスターです。マイクロスターから常時メンテナンスされたケグを必要な本数だけレンタルし、ブルワリーでビールを充填。配送、回収もマイクロスターが受け持ってくれます。空いたケグの回収も近隣を効率よく回って行うので個別に行うよりも省コスト化出来ます。ブルワリー向けのケグレンタルはケグの物流を最効率化してくれる非常に画期的なサービスだと思います。「そこで省くことが出来た時間やスペース、資金を別の部分に投資しましょう」とマイクロスター自身も訴えていますが、全くもって同感です。

日本ではまだこのようなサービスを聞いたことがありません。国土も南北に長くて狭くはありませんからインフラを整えるのも相当大変です。また、消費量もシェア1%未満の状況でまだまだ多くありませんから事業化出来るほどではないのかもしれません。現実問題として使用されているケグもカプラーのタイプがサンキーSとGの2種類あるというのも1つの原因として想像できます。消費が伸び、シーンにブルワリーが増えてくるとこういうサービスが必要となるでしょう。遅かれ早かれそういう局面になるとCRAFT DRINKSは考えます。物流費が上昇傾向で下がる気配は一切ありませんから、案外近い将来なのかもしれません。

さて、別の視点でも考えてみたいと思います。「そこで省くことが出来た時間やスペース、資金を別の部分に投資しましょう」とマイクロスター自身も訴えていますが、言い換えれば「省ける部分は徹底的に省いてブルワリーが本来注力すべきことに集中しましょう」という意味でもあるでしょう。ブルワリーは美味しいビールを製造することが仕事です。レシピの研究や最新技術の勉強をする時間も確保せねばなりません。また、リアルな営業活動、webでのプロモーション、通販サイト構築など自社製品の販売やブランド力を付ける為の施策も実施する必要があります。樽の洗浄やリペアをするくらいならマンパワーをそちらに割くべきであろうとCRAFT DRINKSも思います。・・・あれ、BREWDOGとDE MOLENが急成長を遂げた理由でも同じようなことを書きましたね(笑)

クラフトビールは完全にグローバルな存在となりました。ケグのレンタルでも、ワンウェイケグでも良いと思いますのでブルワリーは美味しいビールを製造することに集中できる環境を自ら作り、高い品質と創造性を兼ね備えたオリジナルなビールで世界に打って出るべきだと考えます。クラフトビールファンはそういう姿勢を絶対に評価すると思うのです。

 

蛇足ですが、マイクロスターのアカウントにこんな動画もあります。クラフトビールと人との関わりは純粋に良いものだなぁと思うのでした。

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