世界最大手の最近の動向について②ホップの供給について(修正あり)

前回はwicked weedの買収について書きました。個人的にも大注目のブルワリーだっただけにショックでした・・・本日は原料の話。beer street journalはAB InBev makes a statement on South African hop allocationという記事でこう報じています。

AB InBev owned South African hops will not be available to non-AB owned breweries in 2017.
2017年はインベヴに所有されていない醸造所には南アフリカのホップは手に入らない

傘下の醸造所にだけホップは供給されるというのです。これは一体どういうことか?

以前にもご紹介したようにインベヴはSAB Millerを買収して合併しましたが、SAB Millerは以前から南アフリカにホップ農園を所有していてそれがインベヴに引き継がれています。がっつりと元を押さえているということですね。今までは余剰分を外販していましたが、上記記事によると「収穫量が少ないので今年は傘下の醸造所だけに供給」し「来年出せるようにするのが目標」とのこと。

・・・んなわけないでしょ、普通に考えて。

wicked weedも買収して、その傘下の醸造所は増えています。ホップのバラエティが近年のクラフトビールシーンを牽引する1つの要素であることは間違いなく、それを独占しようとしているように見えます。来年以降も何らかの理由をつけて外販しない可能性があるわけです。もちろんグループ内の会社で原料を融通することは違法でもなんでもないでしょう。外販しなくてはいけない理由もないのでしょうが・・・

【修正】
ご指摘を頂いた点があり、上記の「独占」という表現は飛躍しすぎていたので修正いたします。供給するつもりがあっても本当に収量が少なすぎて出せない可能性も否定できず、その確証がないので「独占」とするのはいささか早計でありました。もちろん傘下の醸造所向けが最優先でしょうが、、、。タイトルも「供給」についてと修正致します。

IPA全盛のこの時代に本当にそこまでするのか?と疑ったのですが、やはり本当のようで・・・たとえば、modern timesも困っているようです。

【修正】
収量が良くなって来年以降復活する可能性もあり、インベヴ側が恒常的に独占するかどうかはまだ定かではありません。とはいえ、上記を受けてmodern timesが困っているのは事実らしいです。

ホップの生産量の点ではアメリカ、ドイツを含む東ヨーロッパが大きな割合を占めていて、南アフリカ産のものがなくてもビール醸造自体にはさほど影響はないと思います。しかし、ホップは品種・産地で風味が異なり、代替出来るかどうかは難しい問題です。それをメインキャラクターとして据えてたビールは今後レシピの変更を余儀なくされるか、一時終売になるのかもしれません。これは大きな波紋を呼ぶと思いますし、世界中に影響を与えることでしょう。

【修正】
このことから分かるのは「ホップ農園を持っていることはビール醸造において非常に強い」ということ。ただし、大きくないとそれは出来ませんから難しい問題です。マイクロブルワリーが外部に原料の調達を依存するのは仕方ないので、毎年変わる収量や品種のバラエティにアジャストしていくしかないのでしょう。原料が農産物なので、本当に大変。世界最大手のアドバンテージを見た気がします。