2016年のアメリカンクラフトビール輸出量
興味深いデータが出ました。2016年のアメリカンクラフトビール輸出量に関するものです。
AMERICAN CRAFT BEER EXPORTS AT ALL-TIME HIGH – EXCEEDING $121 MILLION
Brewers AssociationにはEXPORT DEVELOPMENT PROGRAMという輸出促進プログラムがあります。協会が輸出を手助けするもので、去年、一昨年と開催されたAmerican Craft Beer Experienceもその一環です。プログラムの說明のページにこうあります。
Program Objectives
Educating international trade and media about the quality and diversity of products offered by the US craft beer
industry and about the US craft beer culture
Informing member breweries about opportunities for their products in key international target markets
Complementing the industry’s own efforts to increase international distribution
二番目に「国際マーケットでの製品販売機会をお知らせしていくこと」とあります。輸出先やそのマーケットについての相談役になってくれるようです。BAには行政からもお金が入っていて国策に近いような印象を受けますが、冒頭の資料の通りガンガン輸出を実際に成功させています。日本の伸びが22.6%と尋常ではない数字を叩き出しているのがその証拠です。
気になる数字を拾っておきましょう。
craft beer export volume increased by 4.4 percent in 2016, now totaling 465,617 barrels and worth $121 million.
(クラフトビールの輸出量は2016の4.4%増加。465617バレルで1億2100万ドル)in the Asia-Pacific region (not including Japan) which grew 12.9 percent. Japan, alone, increased by an astounding 22.6 percent.
(日本を除くアジア・太平洋地域で12.9%増加。日本は突出していて、驚きの22.6%)Canada was again the leading international market for American craft beer, accounting for 54.8 percent of total exports. Other leading importers were the United Kingdom, accounting for 10.1 percent; Sweden, 6.6 percent; Australia, with 4.6 percent; and China, with 3.2 percent of exports.
(カナダが依然として輸出の大半を占め、54.8%。他の国では、イギリスが10.1%。スウェーデン6.6%、オーストラリア4.6%、中国3.2%を占める)
さて、ここまでは事実の発表です。少し別の資料と合わせて考えてみます。
先日この記事でクラフトブルワリーが5234軒となったことをご紹介しました。ものすごい勢いで醸造所が増えているわけですが、クラフトビールの伸びが鈍化しつつあるという指摘もあります。(たとえば、こちらをお目通しください。)BAは2020年までにシェア20%を掲げていて、恐らく遠くない将来それを達成するのではないかとCRAFT DRINKSは予想していますが色々と問題もありそうです。3億人以上いて先進国で唯一人口が増え続けている消費の旺盛なアメリカですが、国内マーケットに今後もどんどんプレイヤーが増えていくのは間違いなく、1軒あたりの量が小粒になってくる可能性もあります。EXPORT DEVELOPMENT PROGRAMはパイの喰い合いになってしまわぬようにするための施策の一環のように見えます。
施策としては非常に合理的だと思います。日本のクラフトビールもこれを真似して、輸出していけたら良いですね。日本はアメリカと違って人口が減っていくことを運命づけられた国で、飲酒可能人口も今後どんどん減っていくことが確実だからです。なるべく早く業界横断的にこういう話が出来たら、と思います。たとえば、輸出に関して言うとキーケグは一つの具体的なソリューションではないかと思います。
さて、これからアンカーの樽生や、ミッション、マッドリバーも日本上陸しますし、その他にもどんどん輸入されると思います。ますます選択肢が増えてくるのですから、飲み手としては「クラフトビールを意図的に選択すること」から「”美味しい高品質なクラフトビール”を意図的に選択すること」にシフトしていかねばならないと考えます。それは国産でも輸入でも全く同じでしょう。ちゃんと醸された良い状態のものを選ぶことが更に重要になってきます。
2017年は「飲み手のリテラシー」が重要になる節目の年かもしれません。