醸造所はSNSを活用しよう、という話 1

アメリカのBrewers Associationからこんな記事が出ていました。BAの担当者による、醸造所のSNS活用法についてです。

USING SOCIAL MEDIA TO BENEFIT YOUR BREWERY

ざっと眺めてみると分かるのですが、ちょっと慣れた人にとっては今更?という感じのことばかり書いてあります。テクニックやコンテンツについて特別すごいことは書いてないように思われます。ただ、SNSを活用するということは近年とても重要であることは間違いなく、改めてSNSの活用を考えてみても良いのではないかと思います。仕込みに追われて発信の出来ていない醸造所にとっては大きな武器になる可能性を秘めているのですから。

さて、BAの記事では以下を前提に、facebook、instagram、twitterに触れています。(下線は筆者による)

Rule Above All Rules: Authenticity
Publishers–i.e. newspapers, digital properties, consumer brands–sometimes they have a bit of an identity crisis. Sometimes they all look the same. But you, dear brewery, already know who you are. You have built your business around values, around community and around people. Hold tightly to that story (that “brand” as the marketing peeps say) and make all of your social accounts an extension of you.

ざっくりとまとめれば、価値、コミュニティ、そしてそれを構成する人に向けて誠実に発信すべきであり、各SNSは「自分の延長」だと書いてあります。この意見には大いに賛成です。

「大手」と「小規模」という比較をした場合、後者の投下出来る費用や人的・時間的リソースは少ない。その点、上記SNSは基本的に無料で利用でき、ベースとなる土台に違いはありません。また、発信したい相手が大手の場合「概念的なマスに近い存在」であるのに対して、後者は「より具体的なコミュニティや人」が想定されます。BAは直接このように言ってはいませんが、この違いを意識するだけで相当な変化があるのではないかと思います。

各国の状況やトレンドなどをずっと追いかけていますが、ずっと変わらずに言われているのが”engagement”(エンゲージメント)についてです。半年前、たぶん聞いていたけれど覚えてなかったんだ、誰も僕に語らなかったからという話を書きましたが、そこでこう綴っています。この気持は今も変わりませんし、きっとそうであろうと思っています。

コモディティとしてのビールはとにかく津々浦々に同質のものが安価に普及していかねばなりません。「同質」で「例外なく津々浦々」なので個別の説明も不要。どーんとテレビCMや雑誌の広告でアピールすれば届く。でもきっとクラフトビールはそうではない。大量生産・大量消費の文化や思想、効率を最重要視するスタンスとは根本的に異なる「ストーリー」があるように感じられます。技術が進めば進むほど、逆説的に絶対にその技術革新では代替できない部分が残ることを意識させられる。体温のある語りがますます意味を持つのだろうと思うのです。

クラフトビールをクラフトビールたらしめているものの一つはきっと「語ること」ではないかと思っています。美味しいことは最早当たり前で、それ以上の何かが液体の向こう側にあるような気がしてならないのです。そこをコピペの広告で手を抜いちゃいけないのでしょう。個別に語るのは面倒で疲れるし、人も時間もお金も場所も必要。一気に広めるなんて不可能だけれど、語る手間を惜しんだらきっとダメなんだと思います。

たぶん聞いていたけれど覚えてなかったんだよね、誰も僕に語らなかったから。

さて、本文に戻ります。

So how do you get the best out of each to benefit your brewery? What are some dos and don’ts? I’m going to attempt to boil a whole boatload of info into a few things you can start doing right now to make a difference.

醸造所の価値を上げる最善の方法とは何でしょうか?何をすべきで、何をしてはいけいないのか?という話です。各SNSによって特性が違うので、それぞれに対して具体的なアドバイスが以下に続きます。各論については次回以降詳しく見ていきたいと思います。

続く。