すべてのジャンルはマニアが潰す??

「すべてのジャンルはマニアが潰す」という言葉を聞いたことがあります。プロレス人気の低迷と新日本プロレスのこれからについてのインタビュー中に出てきたものです。あぁ、なるほどなぁ・・・

この発言は「だから、マニアがダメなんだよ、マニアなんか消えてしまえ!!」なんて意味ではない。どちからというと、発信者に向けたものだと認識しています。「マニア受けの良いものばかり作っていると、エントリー層がついて来られなくなるよ。そうすると結果的にシーンは縮小していくから気をつけようね!!」という意味ではなかろうか。大事な指摘であると思う。

全国のバーテンダー達は「ハイボール」がブームになった時、「次はシングルモルトだ!」と期待したと思う。でも実際にはさほど影響は無かった。ハイボールという名の飲み物が定着したのであって、ウイスキーのソーダ割りが定着したのでは無かったのである。個人的にはラフロイグのソーダ割りあたりに手を出して欲しかったのだけれど・・・

さて、クラフトビールやシングルモルトウイスキーのようなものは「世間から見たら全てマニアックなもの」だということを忘れないようにしています。事実、そうなのですから。東京や大阪などの大都市にいると勘違いし易いですが、全国的に見てまだまだ一般化したとは言い難い。クラフトビールを好んで召し上がる方はそうでない方からみたら間違いなくマニアです。だって、クラフトの中でもごく一部有名なものがあったり比較的入手し易いものがあるだけで、基本的には全方向的にマスに対してアプローチしているわけではありませんから。クラフトであること自体がニッチでカウンターカルチャー的というか、逆張りなのでしょう。

圧倒的な広告費を投入してマスに訴えかけるのも一つの手ではあるけれど、それは母体の大きい大手の話。中小のクラフトビール側は同じことは出来ないし、そう考えない方が良い気がしています。「こういう人に飲んで欲しいなぁ、こういう人に楽しん欲しいなぁ」というペルソナは当然より精緻で厳しくなるでしょう。CRAFT DRINKSとしては黎明期、もしくは過渡期にある日本のクラフトビールはそうあって良いと思うし、むしろそうあるべきだろうと考えます。丁寧に、ちゃんと美味しいものを語る作業が何よりも大事で、そこしかやることがないのかもしれません。

国内大手NBは「非ピルスナー商品」をどんどん投入し、海外の有名ブランドを買収しています。クラフトビールという存在を意識しなくてもこれからますますコンビニやスーパーでエールはたくさん手に入るようになります。そこで大満足する消費者も多数いらっしゃるでしょうし、もっと先を知りたいと考える人も生まれてくるはずです。そういう方々との繋がりを何らかの形で強くし、それが遠くない将来世界を変えてくれるのではないかと考えたりもします。

今片付けておかないといけない宿題はたくさんある。
「すべてのジャンルはマニアが潰す」と書きましたが、この場合ギークばかりに向きすぎちゃいけないけれど、大手と同じことしててもダメだよということでもあるわけで。これってきっと生き様というか信条に近づいてくる話なのだと思うのです。