伸びているのは何か?④

前回の伸びているのは何か?③ではクラフトブルワリーの分類を確認し、「大手クラフトが更に大きく伸びている」ことを見てきました。今日は少し違う視点で見ていきたいと思います。

前回のクラフトブルワリーの分類をもう一度見てみましょう。

①Regional(緑、年間15000〜6000000バレル以下、外販中心)→1760KL〜
②Microbrewery(紺、年間15000バレル以下、外販中心)→〜1760KL
③Brewpubs(黄土色、自社消費中心)
④Contract(茶色、委託醸造)

今回はMicrobreweryとBrewpubsに注目してみたいと思います。日本人の感覚からすると、「年間生産量1760KLがマイクロなの??」と感じるかもしれませんが、アメリカではそういうことになっています。

U.S. Brewery Count

2012 2013 2014 2015 ’14 to ’15 % Change
CRAFT 2,401 2,863 3,676 4225  + 18.1
Regional Craft Breweries 97 119 135 178  + 31.9
Microbreweries 1,149 1,464 2,041 2,397  + 21.6
Brewpubs 1,155 1,280 1,500 1,650  + 12.2

前回も引用した醸造所の数の表ですが、ここ数年のMicrobreweryとBrewpubsの増加は凄まじい。前者は4年で1000箇所以上、後者は500ほど増加しています。こちらのグラフ見て下さい。開業が異常に多いのに、閉鎖が全然無いのです。全体から見ると、「小さな醸造所の軒数がものすごく伸びている」ということがよく分かります。

さて、こんな言葉を聞いたことがないでしょうか。

ビールのスタイルには100種類以上あって、大手ビールメーカーが作っているのはピルスナーなどごく一部。クラフトビールはその多様性が大きな魅力です。

これはスタイルに関して言及したものですが。私は「醸造所という個性の多様性」も魅力の一つだと思います。大手のビッグビールばかりでは画一的で面白くもなんともないでしょう。大きな会社は問屋さんがたくさんついていて自社ビールを複数の州に出すことが出来ます。そういう意味でRegionalという表現は正しい。これに対して、もっと限られた範囲でしか流通しないMicrobreweryのビールがLocal Beerとして地域のマーケットに出回っています。Brewpubは外販はしないので、更に商圏は狭い。しかし、正にNeighborhood barとして成り立っているのでしょう。地元の人達の憩いの場として、溜まり場として、社交場としてなどなど、「ビール+α」の機能があるのだと思います。

お店に行けばバドワイザーもサミュエルアダムスもある。でも、メガブルワリーのコマーシャルビールではなく、ビッグクラフトでもなく、地元のクラフトビールを選ぶこと。決して少なくない人数がこういう行動を取っているから醸造所もパブも潰れずにいます。恐らくこれはビールを通じた「醸造所と消費者との強いエンゲージメント」があるのでしょう。軒数が伸びているのは間違いありませんが、数字では表現されない「個別の関係性の深さ」が根底にあるはずだと思います。

ひとつひとつのサイズは大きくないのですが、消費者の選択肢の多様性を担保するという意味でもMicrobreweryとBrewpubsが増え、そして伸びていくことはとても大事ですね。続く。