ビールの物流 不当廉売

「コモディティとしてのビール」と題した記事でこういうことを指摘しました。

コモディティ化した商品は競合する商品と差別化が難しいので価格だけで勝負することになり、その結果限界まで価格が下がります。

「生販三層」「インベヴ、リベートばら撒き作戦に・・・」でも書きましたが、日本のビール物流は基本的に「生販三層」を採っていて「メーカー→卸→小売」という順番は変わりません。どこかを飛び越えることもありません。

物流を効率化したり企業としての努力をしても、消費者が更に安いものを求めると小売はもっと安く出せるものを仕入れたくなります。卸にそういう交渉をするわけです。同じように、卸もメーカーにもっともっと安く出せるものを求めます。その要望に応えていくと限界まで価格が下がり、もうどうしようもなくなってしまいます。白旗上げるしかないのですが、コモディティの供給はやめられないわけで。実際にそういうことが以前にありました。2012年の「イオンの不当廉売」です。

上記のリンク先でも言われているように、小売の力が卸よりも圧倒的に強くて原価割れでも出すしかなかった状況だったのでしょう。この当時、周りにあった別の小売店は「自分たちの仕入れ値のような価格で販売されていて勝てっこない・・・」と言っていたそうです。コモディティだからどこから仕入れても同じ結果になる。同じ結果になるのであれば一円でも安い方が良い。この件はそういう論理展開が極限まで進んだものだと思われます。流石に公正取引委員会も見過ごせないほど異常に価格が落ちてしまいました。

スタンダードビールの消費量は年々減りつつあり、価格改定もなかなか進まない状況で大手も色々と施策を打ってきました。その一環で2015年に大手各社がクラフトビール市場に進出したわけですが、これはクラフトビールのブームに乗った「脱低価格競争」、つまり「高単価商品への切り替え」という面もあるのではないかと思ってしまいます。