“craft beer”とは何だろう brewdogの場合 ③

Brewdogがクラフトビールの定義に挑戦しました。その第三弾を今回ご紹介します。についてはこちらをどうぞ。2014年11月3日のブログを見てみましょう。冒頭部分はこうです。

Over the course of two previous blog posts (here and here) we have discussed our proposal for a definition of craft beer with online communities around the world. On 13th March, we will take this debate to the next level as we will be formally discussing the proposal at the SIBA AGM.

簡単にまとめると、「議論も深まったし、次はSIBAにこの話をしてみます」ということ。具体的な内容は前回と同じです。確認のため引用しておきましょう。

We believe that to earn its title a European Craft Brewery must be:

1) Authentic
a) brews all their beers at original gravity
b) does not use any adjuncts to lessen flavour and reduce costs.

2) Honest
a) All ingredients are clearly listed on the label of all of their beers.
b) The place where the beer is brewed is clearly listed on all of their beers.
c) All their beer is brewed at craft breweries.

3) Independent
Is not more than 20% owned by a brewing company which operates any brewery which is not a craft brewery.

4) Committed
If the brewer has an estate, at least 90% of the beer they sell must be craft beer.

前回の②で「提案した定義を権威ある団体にこの定義を容認してもらいたい」のだろうということを書きました。多くの人がそういう意味合いで使うようになれば目的達成ですから。合理的です。

・・・実はこの話に続報が無いのです。「容認」とも「否認」とも報告が無い。PUNKでHARDCOREなBrewdogですが、「誰の賛同もいらねーよ、そんなのかんけーねぇ、オレがそうだって言ったらそうなの!」というような発言も見られません。どうしたのでしょうか?

この投稿のコメント欄は随分炎上しています。Brewdogの定義が曖昧で不完全だという意見も多い。もっと言うと、こんな意見も。

To be a craft brewery you have to brew craft beer. To be craft beer it has to be brewed at a craft brewery. This is not definitive! (クラフトブルワリーであるにはクラフトビールを作らなくてはいけない。クラフトビールであるためにはクラフトブルワリーで作らないといけない。これじゃ、定義にならないよ。)

確かに。冷静なツッコミです。矛盾しています。

「定義する」ということは「定義できない部分が生まれる」ということでもあります。クラフトビールを定義すると「クラフトビールではないもの」が同時に発生するのです。各人それぞれの持つ「クラフトビール観」ともなかなか一致しません。統一的なクラフトビールの定義は非常に困難です。
そうこう言っている間にシーンは更に先に行ってしまいます。米やとうもろこしで面白いことができるようになったように、いつしか「クラフトビールではない要素」が「クラフトビールの要素」になってしまう可能性も否定できません。未来永劫絶対に変わらない定義を作ることはもっと難しい。

昨今の日本の状況を見てもそう感じることがありますが、「クラフト」という言葉が空虚なマーケティング用語として流布しているのではないかと。言葉は生きていて、人間の意思とは関係ないくどこかに行きたがります。気がついたときには本来の場所から遠く離れてしまっているのかもしれません。そんな気がします。

SIBAがどう反応したかが分かりませんが、Brewdogがあれから何も言わないということ、そこに大きな意味がありそうな気がします。