クラフトビールはもう親世代の飲み物?

アメリカのZ世代の消費に関する記事を読み、少々思う思うところがあったので筆を執った。

Why Gen Z Drinks Less Craft Beer and What We Can Do About It
Z世代にとってクラフトビールとは”Craft beer is now Mom and Dad’s beer.”(親世代の飲み物)と表現されていて、「おっ、マジかよ…」となった。しかし、よくよく考えてみると、90年代にウエストコーストIPAで有名なブルワリーが多く創業していて、そのあたりから数えたら30年ほど経っている。それほど時間が経てば、当時クラフトビールを楽しんでいた人に子供がいても不思議ではなく、そうしたZ世代、特にその前半の方々にはクラフトビールに対する認識が親世代のものになるのもおかしなことではないのかもしれない。

余談はさておき、本題に入ろう。Z世代がクラフトビールをあまり飲まないのは、お金がないからではなく、消費の優先順位が違うからだとされている。彼らは購入に際して非常に思慮深く、レビューやブランドのウェブサイトを重視する一方で、有名人の推薦にはあまり影響を受けない。自分のイメージ、特にSNS上のものが優先的に考慮され、それを良くするものならば購入するようだが、残念ながらクラフトビールを含むアルコール全般はここに含まれないようだ。うーん、なかなか認識の溝は深い。

しかし、この記事ではクラフトビール業界にとっての機会のことも指摘しているのを付記しておこう。Z世代は心身の健康に関心が高く、新鮮で自然、持続可能で倫理的な製品を好む。これらの価値観は多くのクラフトビール醸造所の核となるもので、そうしたアプローチが出来れば売れる可能性がある。また、彼らは嘘を見抜く能力が高く、確かさを重視するというのも見逃せない。ブルワリーがZ世代に媚びて彼らの言葉を真似ようとすると引かれてしまうというわけだ。そうではなく、ブルワリーの持つ個性や価値観を前面に出すべきだと助言しているが、それは本当にそうだと思う。

つまるところ、アルコール全般はビハインドであるが、個性や主張に共感されればまだ望みはあるということだ。企業体としての哲学とクラフトビールのイメージ刷新が問われている、というところだろうか。安易なそれっぽさが通用しなくなり、自分の言葉で語り、プロダクトそれ自身によってイメージを更新していくことが求められるならば、それはもはやブームが終わったことを意味している。コアな部分が全く無価値になったわけでもなさそうなので、ブームをどう形を変えていけるのかが各プレイヤーに求められているような気がする。これはアメリカの話であったけれども、結局は不易流行、ということなのだと思う。