出版までの道程6 原稿を書くに当たって考えたこと(統計編)

ご縁があってKADOKAWAさんと知り合い、企画書も通って晴れて執筆に臨むことになりました。今回は実際に原稿を書くに当たって考えたことを綴ってみようと思います。

日本におけるクラフトビールの言説は、前回書いたように、「クラフトビールなるビールがあたかも存在するかのような書き振り」であったり、「お決まりの『日本にはクラフトビールの定義がない』という前置きによって言ったもの勝ちになって全てが肯定される」空気が強いと感じます。21世紀の今、流石にこれではマズイのではないか、というのがスタート地点です。

そこで、私が初めて書いた本である「クラフトビールの今とこれからを真面目に考える本」の時から一貫して主張している「統計と情緒」という視点で現在の日本におけるクラフトビールの状況を整理することには一定の価値があるのではないか、考えました。

「統計と情緒」は「客観と主観」、「数字と言葉」と言い換えても良いと思います。今何が分かっていて、何が分からないのか。そして、分からない部分についてはどうやったら分かるのか。こう細かく分けていくことでクラフトビールなる文化現象に対して少しでも輪郭を与えることが出来るのではないかということです。ネタバレになるので詳しくは書かないけれども、統計的視点に立って広く妥当性や有効性を議論し、中長期的に活動することが必要でしょう。他方、情緒的な視点では「イメージとしてクラフトビールなるものが今現在日本でどのように認識されているか」は今すぐ出来ることなので、まずはここから議論を改めて開始し、地ビールからの連続性(あるいは断絶性)、そして今ある広がりを丁寧に記述していくことが求められると私は考えたのでした。また、統計で示せることとそうでないことがあります。情緒も同様で、その線引きや範囲についても広く議論する必要があると思います。

こうした問題意識の下、日米欧の様々な資料にあたり「いつ何がどれくらい」を調べて書きました。本の帯に記されている通り、日本ではクラフトビールの「シェア不明」です。僭越ながら叩き台は私がご用意しましたので、「じゃ、どうする?」という話を皆さんとしたいと私は考えています。

続く

【お知らせ】
KADOKAWAの新書レーベル「角川新書」から「クラフトビール入門 飲みながら考えるビール業界と社会」を8月10日に上梓致します。こうした幸運に恵まれたのも皆様に読んで頂き、ご指導頂いたお陰です。心より深くお礼申し上げます。

本書ではこれまでのクラフトビール本とは異なったアプローチでクラフトビールという文化現象について綴っております。クラフトビールの本にもかかわらず個別具体のビールを取り上げてご紹介してはいません。クラフトビールというものが具体的に存在するわけではない、つまり「クラフトビールというビールはない」のであり、あるのはイメージだということを説明するのがこの本の目的の一つだからです。その上で、クラフトビールを液体ではなく文化現象として描き出し、「ビールと私」という閉じた系からコミュニティ、社会へと開いた系へと転回していくことを提案したいと思い、筆を執りました。本書を手に取ってくださった方が素敵な一杯に出会う手助けになってくれることを心より願っております。

現在、下記で予約受付中です。また、お近くの書店で「ISBN:9784040825410 クラフトビール入門 飲みながら考えるビール業界と社会」とお伝えすれば予約・取り寄せも可能です。ご拝読賜りますようお願い申し上げます。

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