出版までの道程5 KADOKAWAと知り合って改めて考える、本と日本のこと

突然バズって通知が止まらないという経験をしたことをお話ししました。自分の書いたものが案外悪くなかったのだと思えたことで俄然やる気が出てきて、その後も温めていたアイディアを元に色々と書いていきます。そして、新たな挑戦として識者との対談企画であるサシノミを開始し、2024年春からは読書会も始めたのでした。

そんなある日、ご縁があってKADOKAWAさんと知り合うことになります。

編集者の方と会ってクラフトビールの本を作るに当たってどのようにすべきかを相談することになったのですが、幾度となく失敗してきた経験から入念に準備して臨みました。その時お話ししたのがそれまでに行ってきた類書の研究で分かったことで、その内容をアップデートしたのがnoteに掲載しているクラフトビールをテーマとした書籍の4類型なので、ご興味ある方はご覧ください。

これまでに様々なビールに関する本が出版されていて、近年「クラフトビール」をテーマにしたものも少なくありません。雑誌の特集企画になることも多く、この時期にご覧になったことのある方もいらっしゃるでしょう。このように露出が増えることそれ自体はとても良いことなのですが、私個人としてイマイチ納得出来ない部分が常に残り、モヤモヤとしていたのでした。

それは「クラフトビールなるビールがあたかも存在するかのような書き振り」であったり、「お決まりの『日本にはクラフトビールの定義がない』という前置きによって言ったもの勝ちになって全てが肯定される」空気であったりします。他にも挙げれば色々あるのだけれども、非常に危うい土台の上でふんわりとした議論がなされていると感じていたのです。

幸運なことに英語がそこそこ読めたので、国内の類書研究の傍ら海外のウェブサイトや文献にも当たっている最中、彼らの仕事が大分先に行っていることに気が付きます。統計的定義による市場の可視化や原料及び醸造技術の研究は勿論、ビールの地域史の研究やマーケティング、更には昨今注目されるDEIの文脈におけるクラフトビールの位置付けに関する議論も非常に活発です。出版に限って言えば、これらはホームブルー(自家醸造)が合法であり、多数のホームブルワーがいるからこそ可能なのです。ビールにまつわる地域や経済、DEIをテーマにした書籍もその延長にあって、そうした前提を踏まえると海外の国々と日本を純粋に比較することは出来ません。とはいえ、こうした議論が無さすぎるのも寂しいわけです。

今日本で出来ることは無いのか。そんなことを考えながら執筆に臨むことになるのでした。

続く

【お知らせ】
KADOKAWAの新書レーベル「角川新書」から「クラフトビール入門 飲みながら考えるビール業界と社会」を8月10日に上梓致します。こうした幸運に恵まれたのも皆様に読んで頂き、ご指導頂いたお陰です。心より深くお礼申し上げます。

本書ではこれまでのクラフトビール本とは異なったアプローチでクラフトビールという文化現象について綴っております。クラフトビールの本にもかかわらず個別具体のビールを取り上げてご紹介してはいません。クラフトビールというものが具体的に存在するわけではない、つまり「クラフトビールというビールはない」のであり、あるのはイメージだということを説明するのがこの本の目的の一つだからです。その上で、クラフトビールを液体ではなく文化現象として描き出し、「ビールと私」という閉じた系からコミュニティ、社会へと開いた系へと転回していくことを提案したいと思い、筆を執りました。本書を手に取ってくださった方が素敵な一杯に出会う手助けになってくれることを心より願っております。

現在、下記で予約受付中です。また、お近くの書店で「ISBN:9784040825410 クラフトビール入門 飲みながら考えるビール業界と社会」とお伝えすれば予約・取り寄せも可能です。ご拝読賜りますようお願い申し上げます。

カドスト(KADOKAWA公式)
Amazon
楽天ブックス
セブンネットショッピング
紀伊国屋書店ウェブストア
ヨドバシドットコム書籍
丸善ジュンク堂書店
有隣堂
HonyaClub
Bookfanプレミアム
e-hon
エルパカBOOKS