
2025年の第3回読書会で読んだもの 振り返りと次回開催について
3月29日に本年第3回目のクラフトビール文献読書会を開催しました。今年から2部制とし、2時間の枠を2つ設けて議論しています。
手ぶらで参加OKの第1部では立正大学・畢滔滔先生のクラフトビール製造業が地域の活性化に及ぼす影響を読みました。大まかに言えば、日本では何故クラフトビールがいまいちブレイクしないのかについて論じているものです。流行しているという肌感覚はあるにしても、アメリカほどの勢いは感じません。その原因がどこにあるのかをこの文章を下敷きに検討しました。
論拠とされているものに一定の妥当性を感じるものの、昭和の時代をベースにしており、令和の今も論拠として有効かどうかが問題となりました。「(1)革新的商品を提供する起業家、(2)そういう商品を積極的にトライする消費者、および(3)両者を架橋する起業家タイプの流通業者・文化ブローカーの3 者がそろう必要がある。」と何度か文中で触れられていますが、この役割を今誰が具体的に担っているのか、そしてそれはどういう条件が揃う必要があるのか等々、結論は出なかったけれどもエキサイティングな議論が出来たと思います。
続いて第2部です。第2部は事前に指定された文章を読んできて頂き、それを元に議論をしていきました。今回はクラフトビールを美味しく飲むためにはどのように管理したら良いのかを考えるべく、アメリカのBrewers Associationが発表した “高品質クラフトビールのためのベストプラクティスガイド”を課題図書としました。ビールはどのような条件で劣化(本来は老化というべきだと思うけれど、課題図書で劣化という語句を使っているのでここでもそうしておきます)するのかを知り、実際に飲んだ経験とすり合わせることで良いビール、良いビールの状態について理解を深めていきたいと考えています。上記の課題図書を読み、①ブルワリー、配送業者、酒販店、パブでの取り扱いについてそれぞれまとめて発表し、①を踏まえて自宅までの最適な保管方法および流通システムを考えて発表してもらいました。
冷蔵配送・冷蔵保管が何故必要なのかを確認し、美味しく提供するために必要な条件を課題図書をベースに検討しました。「ブルワリー⇒問屋⇒酒販店⇒パブ⇒消費者」という物流経路のどこに危険が潜んでいるのかを考えることは重要です。一度劣化したビールは以後どう頑張っても元の良い状態には戻りません。よって、先の物流経路全てでしっかりと管理されてこそ、美味しいビールを美味しく楽しむことが可能となります。関連する事業者の皆様にはこの一連の流れをサプライチェーンとしてだけでなくバリューチェーンとしても認識し、各ポジションごとにその役割を全うすることが強く望みます。
さて、最終消費者に美味しくビールを提供するために必要なこととして課題図書ではパブでのサニテーションやサービングの設定についても触れています。私からビールの溶解ガス量や平衡圧についてご説明したところ、非常に興味を持って頂きました。この本はパブの現場のことはごく僅かしか触れていないので、次回はDraught Beer Quality Manualの該当部分を読んでサーバー周りのことを集中的に学んでいきたいと思います。
ということで、次回読書会についてです。4月19日にいつも通り東京・北千住の会議室で行います。第1部はその場で文章を読んで議論する会です。手ぶらでいらしてください。クラフトビールのみならず、日本におけるお酒を取り巻く環境を概観し、これからを考えるためのキーワードを考えてみたいと思い、日本のお酒の消費を分析した文章を読みたいと思います。ここから多少なりともクラフトビールの未来も見えてくるのではないかと考えています。
次に第2部です。通常、第2部は事前に指定された文章を読んできて頂き、それを元に議論をしていきます。上述の通り、美味しくビールを提供するにはどうしたら良いかを考えるべく、課題図書はBAが発表したDraught Beer Quality Manualとします。個人利用であれば無料でpdfをダウンロード出来ます。英語で書かれているものですが、日本語に訳すアプリケーションなどを利用して取り急ぎchapter1〜2を読んで来てください。広く利用されているビールサーバーのパーツ、仕組み、セッティングのポイントを参加者の皆さんと議論して理解を深めて参りましょう。この本ではロングドローや混合ガスなど、日本ではあまり馴染みのないシステムについても触れていますが、それらについては次回以降に触れたいと思います。
なお、参加申し込みはフォームからお願い致します。皆様のご参加、心よりお待ち申し上げております。
一点お知らせです。弊会の活動報告書第3号が完成しました。CRAFT DRINKSの本屋でも取り扱っておりますのでご興味ある方は是非。既刊の1号、2号も合わせてお読みくださいませ。