20代の4割は栓抜きを持っていないという現実
先日、サケビバで考える、業界の本音と若者の事情と題した文章を書き、そこで若者のお酒離れについて触れました。当該事業では国産酒類を推しているわけですが、国産・輸入問わず可処分所得が伸び悩む中で嗜好品のお酒をもっと飲みましょうと勧めても難しい。無い袖は振れない。お酒よりも携帯代やサブスクサービスの方が優先順位は高いし、それを諦めてまで飲む理由が見つからないわけです。
このトピックについてはガーディアンやBBCをはじめ海外でも大きく報道されております。で、お呼ばれしましてアメリカのラジオ局から取材を受け、コメントしました。
NPR Japan is urging its youth to drink more alcohol
大分カットされてしまっているのですが、取材の際「世代ごとに前提とするものが異なっていて、異なる世代の常識を知ることから議論を始めないといつまで経っても合意形成は出来ない」ということもお話しました。当たり前過ぎて見過ごしている前提条件が恐らくあって、それをちゃんと確認しておくことからまずは始めたい。もう若者ではない年長者がどこにも存在しない想像上の若者を勝手に想定して話をしても当の若者には現実感がなくてきっと響かないだろうと思うのです。
たとえば、こんなレポートがあります。
酒飲みの私からしたら俄に信じられないのですが、2019年における20代の59.7%しか缶切り・栓抜き・コルク抜きを保有していないのです。約4割は缶切り・栓抜き・コルク抜きを持っていない。つまり、これは「自宅でコルク栓のワインも瓶ビールも飲まない」ということを意味します。40代以降が80%以上なのを考慮すると、世代間で大分生活スタイルが違うのだろうと考えられます。自分が当たり前のように持っているからみんなも同じだろうと考えると間違えてしまいます。
スーパーの棚を思い出すと確かにスクリューキャップのワインが増えたし、ビールも缶が多い。チューハイ類は缶がデフォルトです。コルク、王冠でないものだけで十分なバラエティがあります。安くて種類も多いし、濃いもの、薄いものなど選び放題ですから栓抜き・コルク抜きなど不要だと考える人がいても不思議ではありません。
美味しいお酒がこの世に存在しても自宅に栓抜きが無いから瓶のお酒は飲めない、飲まない、買わないという20代が4割いるという現実を受け止め、これを前提に諸々設計していかねばなりません。クラフトブルワリーも広く若者向けにビールを開発するのであれば価格を出来るだけ抑えるだけでなく、彼らの生活スタイルにフィットする形式にする必要があるでしょう。今後も若者のこういう傾向が一定程度続くと思います。そうなれば瓶ビールを売ってる場合ではないのかもしれない。
各種前提については定期的に確認しないといつの間にか浦島太郎になってしまうかも・・・と改めて思うに至ります。