時代は変わったなぁという雑感あれこれ

調べものしようと、本棚からこんなものを引っ張り出してきました。ビール評論家として有名な故マイケル・ジャクソン氏の「世界の一流ビール500」です。

 

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調べたらamazonで売っていました。

久し振りに手に取ったので調べ物はそこそこに読み耽ってしまいました。そこで一つ気がついたことがあります。

私は出版された時に買ったので2003年に手に入れましたが、掲載されているビールを眺めてみるとびっくりするくらいIPAが少ないのです。その当時まだIPAは今ほど人気でもなくて、ヨーロピアンでクラシックな感じのものをアメリカ風にアレンジしていく感じが強かったようです。

20年弱の間にビールは随分と変わりました。今はIPA全盛の時代になり、ホッピーなものがとにもかくにも人気です。その当時こんな状況になっているとは誰も想像もできなかったでしょう。きっと変わったのはビールだけではなくて、社会とその構成員である人自体も大きく変化したのだと思います。あの頃の人はどういう認識でビールを飲んでいたのだろう。そんなことをふと想像したりします。

私は酒屋さんなのでお酒自体にも強い興味があるのだけれども、たぶん一番興味があるのは人間それ自体なのでしょう。地球上で人間だけが飲むお酒という液体には色々な機能や意味があると思うし、それを消費する文化や風俗、習慣が国や地域ごとに異なるというのもまた面白い。ビールは世界で一番消費されているお酒なのでその文脈の差異や共通点を考えるのは人間について考えることと同じなのではないかと考えているのです。

たとえば、忌み嫌われてきたはずの強い苦味が許容されるようになった前提は何だったのだろうか?とか、ここ日本において地ビールがクラフトビールに変化するにあたって言葉の後ろ側にあるイデオロギーはどう変化したか?などなど。きっと変化をもたらしたきっかけがあるはずだ。それを知りたいと強く思う。

飲んで美味しくて知って楽しいビールというものを対象に選んだのも当然なのかもしれない。面白いもので、現代クラフトビールはクロスオーバーな存在だからビールがビールを飛び越えようとしています。そのため、必然的にウイスキーやワイン、シードル、果てはカクテルまでその範囲は及び、もっともっと遠くに行こうとしているような気さえします。現在進行系で進化し続けるビールに触れていると隣接領域に手を出さざるを得ないし、過去を掘り下げる必要にも迫られるわけです。終わりがないから楽しいのだろう、きっと。

ところで、先日こんなものを飲みました。

これの先にはブリティッシュやアメリカンスタイルのブラウンエールがあったりするんだろうか。これを今リリースする意図な何なのだろう。そして、消費者側にこれはどのように受け止められるのだろう。そんなことをぼんやりと思ったりするのです。

気がつけばナショナルブランドから非ピルスナータイプのビールが近年たくさん出てきていますよね。消費者としては近場のスーパーで色んなものが選べるようになったのはとても良いことだと感じます。時代は変わったなぁと改めて思いますが、こういう現状においてクラフトビールはどこに位置づけるべきものなのだろうかとも考えてしまいます。今私たちがクラフトビールと呼んでいるものはカウンターカルチャーなのか、それともサブカルチャーなのか。言い換えれば、対立するのか、共存するのか。2020年ももうすぐ終わりますからこのあたりを一回総括しても良いのではないか、なんて軽く酔っ払いながら思った次第です。