【雑記】コスパと期待と対話のこと

May 9, 2019

「コスパ」という言葉が好きではない。どちらかと言うと嫌いです。なんとなくだけれど心の奥に確実に存在するこの嫌悪感は何なんだろう、、、といつも思うのです。

気になったのでwikipediaでコストパフォーマンスについて調べてみると、こう書いてある。

コストパフォーマンス英語cost performance)とは、あるものが持つコスト(費用)とパフォーマンス(効果)を対比させた度合い。コスパCPと略されることもあるほか、費用対効果対費用効果ともいう

かけたお金とその効果のバランスの話なのですが、嗜好品の最たるものであるお酒に関して「コスパが良い」という言葉はあまり当てにならないと経験上思っています。飲み手の文脈、経験の量、その時の気分などは不確かなもので、定量的に測れるものではないし、人によって大きく異なると考えるからです。

たとえば最近のウイスキー事情を見てみればよく分かります。世界的に人気が急上昇していて値段が高騰し続けています。中身は変わっていないのに暴騰しまくっているのです。昔から飲んでいる身としては「コスパ悪くなってきなぁ」と思ってしまいますが、これから飲み始める方にとってはそれが当たり前の環境であり、前提条件が違うのだから比較するほうが野暮というものです。結局、「今の相場からして〜〜」というのが世間の言うコスパの第一義なのですね。

逆に昔から大して高騰もしていないし妙な値崩れもせずに美味しいものが手に入るものとしてはシェリー、マデイラワインなどのフォーティファイドワインが挙げられると思います。同じ値段の白ワインと比較してもクオリティはぐっと高いものが多い。2000円出して白ワイン飲むならフィノやマンサニージャの方が圧倒的に良いこともしばしば。マデイラワインなら和食にも対応出来ますし、メジャーでは無いけれど食中酒としてのフォーティファイドワインは超がつくほど優秀。コスパ二重丸。

それにしてもすごい時代になりました。日本はお酒の流通がとんでもなく良くて、超高級品から激安まで何でも揃います。安い方を考えると、スーパーのお酒コーナーに行くとストロング系缶チューハイが100円ほどだったりするのです。缶コーヒーよりも安い。致酔性飲料の下限がどんどん下がってきていて、とりあえず何はなくとも酔えれば良いということであればこんなにコスパの良いものもないのです。レモンサワー最強説は間違いない。

さてさて、こんなことを大真面目に考えていたらクラフトビールなんて飲めないわけなのですよね。どう考えても無茶苦茶高いです。お店でパイント飲んだら1000円はします。ビール400mlちょっとに対して1000円ですよ、1000円。缶ビール4本買ってお釣りが来ます。特売のPB缶チューハイなら10本買えます。コスパ至上主義を徹底したらクラフトビールなんて絶対に飲まない。

色々と思うところはあるのですが、お酒を取り巻く環境を考えると仕方ないのかもしれません。遂に日本の人口は減り始め、ずっとお酒の消費量は右肩下がりです。メーカー側の立場で考えると広く安く流通させてボリュームを稼ぐ方向に舵を切るか、高級路線に切り替えるかを迫られているのが現状と言わざるを得ません。たとえば日本酒においては生産の中心を特定名称酒へ切り替えるところが多く、国税庁のデータもそれを証明しています。全量純米蔵も増えてきたのもその一つでしょう。大きくシーンを見ていくと「大手はボリューム訴求で低価格化もしくは低価格維持」で、「中小は付加価値の高い商品で高単価化」している傾向にあると考えられます。

クラフトかどうかは一旦置いておいて、ビールはカジュアルだからこそ世界で一番楽しまれているお酒です。日常の中に、少なくともすぐそばにあるのがとても大事だと思います。だからこそ、高すぎてもいけない。でも、想いに溢れたリッチな作りのものが安いわけもない。すごく難しいけれど、その立ち位置の取り方が今重要なのだと思うに至ります。クラフトビールのプライシング問題は結構複雑なのです。

コスパという言葉は一般化したように思いますし、「コスパが悪い」という言葉は否定的に聞こえるけれど、CRAFT DRINKSとしてはその発言が市民権を得たことをある意味で肯定的に捉えています。それはきっと「期待していたのにそれほどでもなかった」という評価の裏返しであり、たとえばクラフトビールというものを認知しそれに期待した人がいる証拠でもあるのではないかと思うからです。だから、そういう言葉が聞こえてきた時作り手や提供側は「なるほど、ではどういうものがお好みでしょうか?たとえば想像なさっていたのがどんなものかお聞かせ頂けませんか?」などと語りかけるきっかけにするのが最善なのではないでしょうか。飲み手も積極的にその対話に参加してほしい。いや、むしろ参加すべきです。ちょっと面倒かもしれないけれど、そうすることで良いものに出会えるチャンスは増えるし、その結果最高の一杯につながるルートが見つかるかもしれない。対面でもwebを通じてでも良いし、どちら側からでも構わないので何かアクションが起こせるのではないか、そんな気がしてなりません。コスパを口にするということは少なくとも一度は召し上がったわけで、その対応やフォローの仕方が次に繋がると信じています。地味ですがこういう対話をコツコツ積み重ねていくのがクラフト的なんじゃないかと思うわけなのです。

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