CRAFT DRINKS的 “Beer of the year” 2018 ② ニューカマー編

毎年恒例の”Beer of the year”ですが、今回はニューカマー編も書いてみようかと思います。まだ創業間もないブルワリーの作品を取り上げたいと思います。

 No Science Psycho table beer

この写真はベルギーのブリュッセルに行った時に訪れた有名ビアパブ”Moeder Lambic”(ムーデルランビック)で撮ったものです。この時飲んだカンティヨンのドラフトも美味しかったけれど、やはりNo Scienceがとても強く印象に残っています。

・・・のーさいえんす?

まぁ、よほどのベルギービール通でないと知らないと思いますが、すごく美味しいビールを作っていますので是非ご紹介したいと思います。

ブリュッセルから北に少し行ったところにNo Scienceはあります。2016年創業の若いブルワリーですが、そのポテンシャルは計り知れないと思います。

公式HP / 公式facebookアカウント

彼らのHPでは自身のビールについてこう宣言しています。

this is not Belgian style / 
objective we still put our Belgian touch in it

Dans notre plat pays au nombre incalculable de bières standardisées au nom de la tradition et des recettes éculées si chères à nos industriels.

No Science veut, à l’instar d’un trop petit nombre de brasseries chez nous, vous faire partager ses propres interprétations de recettes dans des styles minoritaires au pays des bières d’abbaye : des I.P.A, Porters, Bitters ou Singles Hop au goût franc, à l’amertume houblonnée dominante sans lourdeur, ni surenchère excessive sur le taux d’alcool.

Fans de longue date de musiques électrifiées qui dépotent et nous influencent jusque dans le choix du nom des bières, nous aimerions apporter avec No Science cette petite note dissonante, ce grain irréductible de distorsion qui peut peut-être indisposer mais qui confère aux choses et évènements cette qualité trop rare des expériences uniques.

A vous d’essayer!

フランス語を英語に訳すとこんな感じです。

In our country dish with countless standardized beers in the name of tradition and old recipes so dear to our industry.

No Science wants, like too many breweries at home, to share its own interpretations of recipes in minority styles in the land of abbey beers: IPA, Porters, Bitters or Singles Hop to taste frank, with dominant hoppy bitterness without heaviness, nor excessive overbidding on the alcohol level.

Long-time fans of electrified music that detects and influences us even in the choice of the name of the beers, we would like to bring with No Science this small dissonant note, this irreducible grain of distortion which can perhaps annoy but which confers on things and events this rare quality of unique experiences.

To you to try!

「ベルジャンスタイルビールを作るのではなく、ベルギー人としてのニュアンスを載せて」とか、「音楽に影響され」とかカッコいいなぁ。自分たちのイマジネーションがビールに溶け、不協和音やディストーションとなって響く。

だからなのか、ロゴやラベルデザインもNOFXっぽいというか。ちょっとプログレッシブメタルっぽいタッチもあったりしてとても印象的です。

 
 
 
 
 
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さて、No Scienceを私がとても高く評価するのはベースの技術が確立された上で自分らしさを表現しようとしている姿が液体を通して感じられたからです。PsychoのスペックはAlc. 4% vol.、IBU60、6gr CO2/L、ホップはカスケードとシムコー。軽くてシュワッと爽やかでありつつホップアロマがトップに香り、飲み込むと程よくモルティでじんわりと渋さの無いクリーンな苦味が口の中を締めてくれます。彼らはこれをテーブルビールと位置づけていますが旧来のテーブルビールとは明らかに違う。クラシックなものをちゃんと勉強した上で21世紀的かつ自分たちらしい解釈を込めた作品であろうというのが伝わってきました。決してごつくてパンチのあるお酒ではないのに、ちゃんと主張がある。ものすごいポテンシャルを感じます。

重たくないホッピーなお酒としてベルギビールの重要な位置を占めるものは幾つかあると思っています。私はDe RankeのXX BitterとDe La SenneのTaras Boulbaの2つを挙げたいと思いますが、Psychoはホップの美味しさは残しつつ更に軽さを追求した21世紀の新しいベルジャンホッピービールとして高く評価したい。

ふと思うのです。テーブルビールは「とりあえず生」的なポジションで飲まれるものですが、現代的なライフスタイルにおいて全ての人間に共通するコモディティは無くなってきたように思います。ワインもあるし、ウイスキーもあるし、RTDも選ぶ放題だ。そんな中で特定の人たちにしか刺さらないかもしれないけれど、強い熱量が込められていて惹かれる。そう、オルタナティブロックだ。モダニゼーションとオルタナティブのバランス感。

もし日本でこれが飲めるようになったらBGMはDinosaur Jrのwaterにしよう。穏やかにうるさい、ざらついたディストーションが心地よく染みてくるだろう。異論は認める。飲めるようになったら何をかけるか、是非語り合いましょう。