仏の顔は何度までだろう?そして、その結果は・・・

もう随分前のことです。奥さんとビアパブに行ってこんな会話をしました。

「これ、新しいやつだよ!」
「えー、このブルワリーはイヤだよ、こないだのはイマイチだったじゃん」
「今回は良いかもしれないよ」
「いいよ、いらない。だったらお家帰ってランビック飲む」
「、、、お、おぅ」
「じゃ、とりあえず大手のピルスナー、パイントで」

こんなことを言うわけなのです。1人の飲み手として、自腹切って飲むなら失敗したくないのは当たり前ですよね。そりゃそうだ。

人間良かったことは忘れがちで嫌だった経験はなかなか忘れないものです。仏の顔も三度までなどと言うけれど、まぁ、2連続でダメだったら普通選択肢から外されてしまうし、余程のことがない限りそれ以降そのままでしょう。恐らく彼女の中ではそのブルワリーにはもう復活することが無いくらい「失敗体験」をしてしまったのだと思います。

自分のことを振り返っても確かにそう思うわけです。仕事柄好みは関係なく色々なものを飲むのですが、その時の心持ちとは全く違うプライベートな時には敢えて選ばないものは数え切れないくらいある。気がつけばCRAFT DRINKSのinstagramに載せているものはほとんどがアメリカかベルギーのものだったりして、我ながら色々考えてしまうのです。

ビールそのものが不味かったのかもしれないし、提供するお店側の提案が悪くてニーズにマッチしなかったのかもしれません。もしかしたら他にも理由があるかもしれないけれど、最終的な結果として飲み手に「うーん、ダメだこりゃ」と何度か思われてしまったら次のチャンスが来ない。輸入ものも含め現在の日本には恐ろしいほどクラフトビールの選択肢があるのだから期待値の低いものを積極的に選ぶ理由がないのです。「失敗体験」を取り返すことは極めて難しい。

CRAFT DRINKSが一番心配しているのは「失敗を短い期間で複数回経験し、クラフトビールそのものに対して嫌悪感を覚えてしまうこと」。ファンがそのジャンル自体からドロップアウトしてしまうのはシーンにとって大きな損失です。たとえばアメリカではクラフトブルワリー同士のシェア争いが激化していますが、一部の識者たちは「クラフトビール離れ」を危惧しており「真のライバルはワインと蒸留酒だ」と考えています。実際、ワインと蒸留酒の伸び方は顕著で近年クラフトビールのそれを上回る勢いです。CRAFT DRINKSとしては日本も同じことが今後顕著になる気がしています。そうならない為にもをブルワリーや流通、飲食店など全てのレイヤーを巻き込んで飲み手に「クラフトビールの成功体験」をして頂けるような良い環境を整備していくべきだと考えます。

・・・とはいえ、入手困難なものばかりに成功体験をしてしまうと再現性がなくてそれはそれで問題ですよね。なかなか難しいなぁ。