Mexican Lager(メキシカンラガー)

Feb 22, 2018

アメリカのクラフトビールシーンでにわかに脚光を浴びているスタイルがMexican Lager(メキシカンラガー)。CRAFT DRINKSで取り扱うFull Sail Brewing(フルセイルブルーイング)でも数年前から作っています。昨年開催された大江戸ビール祭りやAmerican Craft Beer Experienceでもケグを繋いでご紹介しました。CRAFT DRINKSとしてはメキシカンラガーを「ネオとりあえずビール」と捉えており、お試し頂いた方には「おー、なるほど」と仰って頂きましたが、まだまだメキシカンラガーは知られていないものです。メキシカンラガーとはどんなものなのか、そしてどういう文脈に位置付けられるのかをCRAFT DRINKSなりに解釈してみたいと思います。

AHAが指摘するように、歴史的に見てメキシコのビールはヴィエナラガースタイルのものが有名でスタイルガイドラインなどでもネグラモデロがよく典型として紹介されます。DRAFT MAGAZINEでも下記のように説明しています。

So what makes a lager “Mexican-style” and not just an American light lager? A very brief history lesson: In Mexico at the end of the 19th century, German expats began commercially brewing the Vienna-style lagers they were used to, which have now loosely become the Mexican lagers we see exported to U.S. shelves. It’s too easy to say, though, that contemporary American-made, Mexican-style lagers are Vienna lagers. No, brewers are interpreting this cultural inspiration in different ways.
アメリカンライトラガーではなく、メキシカンスタイルラガーとは何なのか?歴史的に見るとメキシコでは19世紀終わりにドイツ系移民がヴィエナラガーを商業醸造し始め、それが段々と変わってきて今アメリカの棚で目にするメキシカンラガーとなりました。ざっくり言ってしまえば、現在アメリカで作られているメキシカンスタイルラガーとはヴィエナラガーです。いや、醸造家は文化的なインスピレーションを受けて解釈して別のものへ変えてきています。

「ヴィエナラガーを解釈したもの」という方向性があるのは実際に飲んでみても多少感じなくもないのですが、ものによっては最早その形跡は拾うことが出来ません。実際、GABFやBJCPでも「メキシカンラガー」として独立したカテゴリーはまだなく、各ブルワリーの判断によって命名されるようです。メキシカンラガーを自称するビールも品評会に出品する際American-Style PilsenerやInternational-Style Pilsenerになると思います。all about beer magazineの記事ではコロナやネグラモデロなど様々なメキシコ産ビールを念頭においているのでしょう、色味(SRM)については無視しています。なお、ホワイトラボがメキシカンラガーイーストを発売していますが、こちらも色味については薄くても濃くても構わないとしているようです。まだ認知され始めた段階なので条件の確定についてはもう少し時間がかかるのかもしれません。

ということで、一旦まとめてみましょう。まだ定義はないわけですが、一般にはこんな感じで認識されているようです。

  • ①元々のメキシコのビールはドイツ系移民によってヴィエナラガーが作られるようになったが、コロナに代表されるライトなものに変化していった
    ②アメリカンクラフトビールの技術・思想を加えて今のメキシコビールを再解釈し、コロナインスパイア系と言いますか、コーンを使ってライトに仕上げたラガーを「なんとなく」メキシカンラガーと今のところ呼んでいる
    ③まだ明文化されておらず品評会のカテゴリーとしても独立していない、名前がついたばかりのタイプ

さて、それでは何故にわかにメキシカンラガーは評価されてきているのでしょうか?CRAFT DRINKSなりに考えてみました。

アメリカでは大手のラガーは減少の一途を辿っているにもかかわらず、クラフトビールはマーケットにおけるシェアをどんどん広げています。現在、ビール消費の10%以上がクラフトとなり、大手が脅威を感じているのはご承知のとおりです。ミレニアル世代を代表として「せっかく飲むなら非大手のこだわりのものを」という意識が広がっており、皆さんクラフトビールを意図的に手に取るようになってきています。それ故、大手によるクラフトビール醸造所の買収が進んでいるのだと思われます。

IPA人気は未だに高いのですが、旧来のクラフトビールファンではなく、苦いものが得意ではない新しい層もマーケットでは最早無視できない規模となっています。「クラフトビギナー」とでも言うべき方々も重要な顧客であると認識し始めているわけです。そういう方向けに「フルーツIPA」や「セッションIPA」など苦味もありつつヘビーでない路線の亜種も増加傾向です。

また、食事との相性なども考慮したトータルフードエクスペリエンスとしてピルスナーを始めとするすっきりとしたラガータイプの再評価や回帰の流れも一部に見られます。(最近あまり聞かなくなりましたが、数年前までホッピーピルスやIPLを盛んに押していた時期もありましたね。ギークとビギナーを繋ぐ為の折衷案だったのかもしれません。)

モルトによるボディを無くして軽く、味を派手ではなく繊細にすっきりまとめたライトラガーは飲み手を選ばない永遠の定番。飲みやすくて食事の邪魔をせず、TPOを問わないピルスナーに代表されるライトラガーは万人向けのビールで、そこにアメリカンクラフト的なツイストが加わったメキシカンラガーは「クラフトビールファンとビールに全くこだわらない人の中間層」にとってぴったりのアイテムなのではないかと想像します。こんな流れもあって全米のクラフトビール醸造所もメキシカンスタイルビールを量産し始めているのだと考えます。

メキシコの典型的なビールはとうもろこしを使用した「色味は問わずクリスプで、ゴクゴク飲める軽いボディ」で、基本的にホップによる特徴を付けません。ややもすると水に近い印象でした。しかし、アメリカンクラフトビールの文脈における新しい解釈のメキシカンラガーは「ちゃんと味がするのに、クリスプでゴクゴク飲める軽いボディ」という一見矛盾しそうな2つを両立させようとしたイノベーティブなビール。ちょっと横文字が長いのでCRAFT DRINKSはこれを「ネオとりあえずビール」と名付けたのにはこういう理由があったからです。

メキシカンラガーではホップはあまり立て過ぎず、全体的に軽くて雑味無くキレイに作られています。そのため、オフフレーバーと呼ばれる劣化や技術的なミスによる風味がとても目立ちやすいお酒です。「ちゃんと味がするのに、クリスプでゴクゴク飲める軽いボディ」を実現するには高い技術力が必要であり、これを定番で作り続けられるということは醸造所のレベルが高い証であるとも言えます。

そんなメキシカンラガーがフルセイルから作られています。その名もセシオンセルヴェサ。スペイン語ですね。もうすぐ日本でリリースされ店頭に並びます。気になった方は是非お試しくださいませ。

フルセイルのメキシカンラガー・セシオンセルヴェサ
こちらはアメリカのクラフトビール専門誌all about beer magazineでもメキシカンラガーの典型と紹介されているもので、アメリカ最大のクラフトビールの祭典“Great American Beer Festival 2017”においてinternational-style pilsner部門で銀賞を受賞しています。※セルヴェサはスペイン語でビールのこと

穏やかではありますが華やか香りがあり,モルトの味わいも感じつつドライなフィニッシュ。国産大手ほどの発泡感もなく、滑らか且つ軽やかにゴクゴク愉しんで頂けます。お食事の邪魔をせず、TPOを気にせずにいつでも飲める万能タイプのビールです。熱い日にはレモンやライムのスライスをドロップして飲むのもオススメの飲み方です。

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