すごいぞ!Full Sail Brewing Company②醸造設備編
今回はフルセイルの醸造設備に関してご紹介して参ります。設備の案内は主に先代醸造長のジムさんがして下さいました。ちなみに、ジムさんはポートランドのEcliptic(イクリプティック)の醸造長も務めた大ベテランです。
原料
原料は出来る限り地元オレゴン産にこだわっています。ホップはヤキマバレーのものを中心に使用。オレゴンには数社モルトスター(大麦を麦芽に加工する会社)があり、そこと長く付き合っています。液種によって使い分けるので、たとえばドイツ・ワイヤーマン社製のモルトも。メキシカンラガーに使うフレークコーンもありました。
酵母はwyeastやwhitelabのものを使っているのですか?と伺ったところ、「いやいや、うちにはラボに専属のスタッフが3人いて全員元wyeastの職員だったんだよ」とのこと。流石!現在、酵母会社から調達することは一切なく、全て自前。独自にオリジナルイーストも持っているそうです。仕上がったビールの成分検査や細菌検査なども全て毎回自社で行っています。マークさん曰く、「QA(quality assurance、品質保証)には力を入れていて、万全の体制」。
醸造設備
全米29位の規模を誇るフルセイルですが、醸造所は思いの外コンパクト。徹底的に効率化がなされています。
ミリングルーム(麦芽破砕室)
原料のサンプル。
マッシュタン。大迫力。その大きさにビックリ。
Meuraのマッシュフィルターを早くから導入。これによって麦汁の収量が向上し、作業スピードのアップしたそうです。
参考までに動画を貼っておきます。
途中にあったので先にご紹介。Centrifuge(遠心分離機)。フルセイルは熱処理は一切しませんが、品質安定の為遠心分離を行います。
ケトル。正に煮沸中でした。
発酵タンク。600バレルなので、70KLほど。
ブライトタンク。こちらも巨大。
充填・保管
ボトリングライン。この日はお休みでした。
ケグ詰めライン。非常に効率よく出来ていて、一連の作業がこの一台で全て賄えます。
缶詰ライン。こちらは「mobile canning machine(移動式缶詰機)」で、缶詰したい時に手配するレンタルする設備です。一日に3万本以上詰めるのですが、即出荷で全然余らないそうです。これでは賄いきれないので、10月には10倍速で詰められる最新式のマシンを購入予定。
冷蔵倉庫。ホップとケグを保管しておく場所です。
中に入るとケグの山。前回ご紹介した通り、この一角にパブで提供されているビールが置いてあります。
出荷待ちのボトルが何パレットも。マイクロスターなどのケグレンタルサービスも上手に活用し、季節変動のある需要にも対応。
倉庫。満杯になっても一週間で空になってしまいます。フルセイルはフレッシュなものを常に提供していきたいと考えていて、受給予測と配送を効率化。仕上がってから最長でも一週間で出荷とのこと!店頭に並ぶまで相当早いです。日本向けにも一番フレッシュなものを送るからね!とマークさん。
ビール熟成用に樽が幾つか。ここ以外にもバレルルームが有り、かなりの数を所有しています。樽は全てバーボンバレル。日本の感覚からすると贅沢だなぁと思うのですが、ワイルドターキーやバッファロートレースなど有名蒸留所とのつながりがあり、樽は常時確保出来るそうです。そして、更に驚きなのがバーボンバレルはたったの一度しか使わないとのこと。バーボンの風味を最大限活かす為なのですね。
これだけの大きさで醸造しているにもかかわらず、現場で作業してるスタッフが非常に少ない。写真がないのですが、毎分ごとに充填実績レポートが出ていて、作業効率を常時監視して何かトラブルがあればすぐに修正します。機材も効率的なものを選んでいますし、醸造所自体がコンパクトで省スペース。以前ご紹介したように、エコフレンドリーで省エネ化も推進。全てにおいて無駄がない。シフト調整を最適化しているおかげで週休3日制も実現。素晴らしい!創業30年の老舗クラフトブルワリーでありながら、それに胡座をかかず果敢に攻めています。
フルセイルは美味しいビールを作るだけでなく、超ホワイト企業でもありました。