まだ名前の付かない狭い隙間

先日、アメリカンブロンドエールと文脈という文章を書きましたが、Kona Brewingからケグでは日本初上陸のビールを若干数お譲り頂きましたので、もう一点ご紹介致します。ちゃんと醸されているだけでなく、このギリギリを攻めた点をCRAFT DRINKSは高く評価しているのです。

どこかが違うIPAというものでアメリカンスタイルIPAの亜種、もしくはその発展型を幾つかご紹介致しました。その中で”Fruit IPA(フルーツIPA)”というものが出てきます。柑橘系の香味をホップによってしっかり出したIPAにランドルでオレンジやグレープフルーツを合わせたりすることがありますよね。相性が良いのはよく知られているところだと思います。Ballast PointのGrapefruit Sculpinなどはその典型でしょう。他にもまだまだたくさんあります。たとえば、日本には輸入されていないようですが、dogfish headのaprihop(アプリコット入りIPA)Odell brewingのtree shaker(桃入りインペリアルIPA)などなど枚挙に暇がありません。フルーツIPAは今後注目すべきものの1つだと思います。

今回ご紹介するのはKona BrewingのHanalei Island IPA(ハナレイ アイランドIPA)というもの。POG(ポグ)ジュースを使ったビールです。POGはPassion fruit(パッションフルーツ)・Orange(オレンジ)・Guava(グアヴァ)の頭文字を取った、ハワイローカルに愛されるミックスジュースです。

先日こちらをボトルでテイスティングしたのですが、「うーん、これは攻めているなぁ」と唸ったのでした。4.5%という軽い仕上がりですしトロピカルなミックスジュースを使用しているのでアロマはかなり甘やかな香りです。ややもするとチューハイっぽくなりそうなところですが、モルティなフィニッシュとちゃんと感じるホップの苦味でギリギリのラインでビールとして成立させています。矛盾しそうなところを本当に上手に落とし込んでいるなぁと感心するのです。涼しい顔をしながら超絶技巧を繰り出しているような。

甘口のフルーツエールでもありませんが、飲んだ印象としてはアメリカンIPAでもありません。度数も軽いとはいえ、セッションかというとそうでもないような。これをフルーツIPAとご紹介するのには躊躇います。スタイルとスタイルの、まだ名前の付かない狭い隙間を攻めた感じがするのです。でも、ちゃんと醸してある美味しいビールなのは間違いない。このギリギリ感が面白い。ちなみに、このビールのことをKona Brewingは”アイランドIPA”と呼んでいます。”アメリカンスタイルIPA”ではなくて、”アイランド”なのがポイントですね。

ここで言葉を重ねてもあまり意味がないかもしれません。冒頭でもご紹介した通り、輸入元のご厚意で日本初上陸のバッチを若干数お譲り頂きました。もちろんキーケグ詰めのもので、リーファーコンテナ輸入・定温倉庫保管。夏場は自動的にクール便にてお届け致します。7月初旬から中旬にかけて入荷し、順次発送を予定しております。只今ご予約を承っておりますので、CRAFT DRINKS SHOPにて詳細をご確認下さい。実際に感じてみて頂ければと思います。

ちなみに、POGのトロピカルなアロマをしっかり感じようとするならばパイントグラスよりもワイングラスの方が良いと思います。提供の仕方で随分と印象が変わるのです。是非お試しを。