挑戦。でも、最後にオチもあります(笑)
最近マット師匠のブログを訳したり、ドリーフォンティネンの近況をご紹介をしてきました。サワーエールを愛する私としては楽しい執筆作業です。ちょっと調子に乗ってもう少しサワーエールについて書いてみようと思います。
Bzart(ブザールト、もしくはビザール)シリーズという極めて実験的なビールがあります。
上の写真は私がベルギーに行った時に購入した、Oud Beersel Bzart Kriekenlambiek Millesime 2012(アウトベールセル ビザール クリーケンランビーク ミレジメ 2012と読みます)です。Brut Nature(ブリュット ナチュール)とも書いてあります。これはどういうものかと申し上げますと、「シャンパーニュと全く同じ製法で作った、さくらんぼランビック」です。
BzartはOud Beersel(アウトベールセル)醸造所から2012年から発売されている挑戦的なシリーズです。最初ランビックとブロンドの2種発売されたと記憶しております。ビール、ワインに精通する方からの発案で、リンブルグ地方のワインの作り手とのコラボレーションビールを作ることになって、シャンパーニュ製法のビールを作りました。さくらんぼランビックには酒齢13ヶ月以上のものに 1リットル当たり400グラムのサワーチェリーを使用。シャンパーニュ酵母を補って瓶詰。 その後はシャンパーニュと全く同じ方法で動瓶や澱引きなどをして数か月もの時間をかけて作られます。 そういえば、MillesimeもBrut Natureも確かにシャンパーニュっぽい表現ですね。解説にはデゴルジュマンとかドサージュという用語も出てきます。
上記のセッショントリプルタイプなど、ランビック以外のビアスタイルにもその製法は応用されています。(ちなみに、ラベルのうずまきというか、もじゃもじゃ部分の色違いで発売されています。セッショントリプルは黄色で、グーズはオレンジ色です。)
Deus(デウス)など、ベルギーではシャンパーニュ製法で作ったビールはごく僅かながら存在していましたが、ランビックでこの方法を採用したのは初めてではないでしょうか。非常に興味深いものがあります。
ここからは完全に私見ですが、この取組みは「ビールにシャンパーニュ製法を取り入れて、今まで無かったフィールドを開拓すること」だと考えています。色々なスタイルに取り入れる中で、ランビックにもやってみたということでしょう。ぶどうでなくて麦にシャンパーニュー製法を応用すること、つまりビールにおいてルミアージュやドサージュ、デゴルジュマンすることで従来とは違う「何か」が生まれるだろうという予測のもとに挑戦しているのだと思います。もちろん、ビール醸造には普通使わないシャンパーニュ酵母を添加することで香味や発泡感などに影響があるはずです。それがどこまで特徴的で、現行品との明確な違いが出るのか?そして、それが固有のものと認知されるか?結論を出すにはもう少し時間がかかりそうな気がしますが、注目に値する挑戦と言って良いでしょう。
クラフトビールは本当にアグレッシブな世界で、隣接領域のメソッドや思想をどんどん取り込んで進化しています。「麦でシャンパーニュ製法」という挑戦も非常に興味深いですし、「酸のあるランビックでシャンパーニュー製法」でとなれば更にワインっぽくなるかもしれません。このブログで何度も書いていますが、クラフトビールはクロスオーバーな存在であり、隣接領域との境目がどんどん曖昧になっていきます。その挑戦をリアルタイムで感じることが出来るのは本当に幸せなことです。
ちなみに、醸造所HPの商品説明のページを見てみましょう。 →BZART LAMBIEK
白いYシャツのラベルのものが出ています。実はもうこれは販売されていない古いものだそうです。(なぜか醸造所のHPでは古いものが今でも使用されていて、変更されていません。)今は冒頭の写真のように「うずまき」というか、「もじゃもじゃ」ラベルに統一されています。ビール、ワインに精通し、Bzartシリーズの発案をしたLuc Dirkx(リュック ディルクス)さんに直接連絡して、尋ねてみました。酵母が変わったとか、ドサージュの量が違うとか、考えられるあらゆる可能性を想像していたのですが全く確証が持てなかったので直接聞いてみたのです。
何で2種類ラベルがあるんですか?Yシャツともじゃもじゃで何か違うのでしょうか?
すると、こうお返事を頂き、椅子から転げ落ちるほど笑ったのでした。
あぁ、Yシャツラベルは最初期のものなんだけど、やめちゃったんだよね。ラベル代が高くて(笑)
わはははは!深読みし過ぎたー!!忘れていました、これがあのベルギーのビールだってことに。ビールってビールなんですよね。頭柔らかくして飲まなきゃダメってことですよ(笑)