濁ってますが、何か?

Jun 13, 2016

知人から譲って頂いたビールのことを少し書いてみようと思います。それは本当に衝撃的な体験でした。認識を改めねば、そう思わされた特別なビールのことです。

treehouse bright

こちらはアメリカのtree house(ツリーハウス)という醸造所のインペリアルIPA、Bright(ブライト)というものです。ホップを上手に使っているのでしょう、「あれ?これはマンゴージュースなのではないか?」と錯覚するほどのトロピカルな香り。それは口に含んでも続きます。フィニッシュにしっかり苦味もありつつ、とにかく強く華やかでどこまで行ってもクリーンな味わいです。こんなにきれいで、ホップの苦味と香りだけを抽出したIPAは今まで飲んだことがありません。素晴らしい。段違いに素晴らしい。私個人としては今年のベストビールトップ10に堂々のランクインで、IPAでこれを超えるのは無理ではないかと思うほどです。

ただし。

写真を見てみてください。液体がすごく濁っています。はっきり言って、透明感はほぼゼロ。いわゆるClarity(クラリティ、日本語では清澄度、透明度という意味)が低いです。間違いなくhazy(ヘイジー)と表現するべき色合いです。

初め、「あれ?随分とヘイジーだなぁ、こんなにおいしいけれど、状態悪いものに当たっちゃったのかな?」などと思ったのですが・・・ちょっと調べてみたらその理由が分かりました。尋常では無い量のホップを使っているのです。それじゃぁ仕方ない。(気になる方は公式HPやクローンレシピなどを見てみてください。)

BJCP2015年版の37ページ目、カテゴリー21AにアメリカンIPAの説明があるので見てみましょう。Appearance(外観)にはこうあります。

Appearance: Color ranges from medium gold to light reddish-amber. Should be clear, although unfiltered dryhopped versions may be a bit hazy. Medium-sized, white to offwhite head with good persistence.
外観:ミディアムゴールドから軽めの赤みを帯びたアンバーの色味。クリア(※透明感がある、という意味)であるべきだが、無濾過のドライホッピングしたものは若干ヘイジーであっても良い。中程度のサイズで、持ちの良い白、ないしオフホワイトのヘッド。

22AのDouble IPA(ダブルIPA)も外観の清澄度について同じことが書いてあります。

Appearance: Color ranges from golden to light orangecopper; most modern versions are fairly pale. Good clarity, although unfiltered dry-hopped versions may be a bit hazy. Moderate-sized, persistent, white to off-white head.

ドライホッピングして濾過しないと多少なりとも濁るのは当然ということですが、ツリーハウスのビールはどれも「若干」どころではなくて、「ばっちり濁っています」。バカみたいに大量のホップを使用しているから当たり前と言えば当たり前なのです。

近年の傾向として透明感の高いもの、つまりクラリティの高いものが評価されるような流れがあるような気がしています。逆に言えば、濁っているものは評価が下がる風潮があるような気がしてならないのです。醸造に失敗して濁ることもあるので、そういうことなのかもしれません。しかし、このビールを飲んでどうでも良くなってしまいました。濁っていても構わないのですよね、ぶっちぎりで美味しければ。意図した方向で作ったら必然的に濁るのですから、仕方ない。ホップの美味しさを追求するとそうなってしまうのだ。なんとなくヘイジーなものを忌み嫌っていた自分を情けなく思います。認識を改めねば。ツリーハウス、恐るべし。

さて、もう一点指摘しておきたいことがあります。
アメリカ産でも、国産でも、IPAやホップをたくさん使うビアスタイルのものは大概「渋い」。「苦い」のではなくて、「渋い」のです。飲むと口の中がイガイガする感じで、私はとても嫌いです。Hoppy(ホッピー)であるということはホップが効いているということであって、渋みは要りません。それは理屈では分かるのですが、なかなか体現してくれるものがなくて困ります。そういう意味合いでも、このお酒は衝撃的でした。極めてクリーンで渋みがなく、アロマが強くて苦い。ホップの使い方という点ではそんじょそこらとは比べ物になりません。とにかく素晴らしい。

これがアメリカのIPAの一つの到達点であろうと思います。あぁ、それにしても随分先まで行っているのですね・・・

濁ってますが、それが何か?

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