マット師匠のホッピーサワーエール指南①
だんだん暑くなってきましたね。もうすぐ夏がやってきます。汗をかいたらグッと一杯飲みたくなるわけです、私たちは。そんな時はやっぱりサワーエールではないでしょうか。酸ですよ、酸。
ということで、マット師匠のブログから為になるお話を。今日はHOPPY SOUR BEERSをご紹介します。1年半ほど前のものですが、色褪せない大事なことばかりなので、是非お読み下さい。ちょっとずつ引用と翻訳を付け、若干の補足もつけておきたいと思います。誠に恐れ入りますが、私が翻訳のプロではないということだけご了承ください。
まず前提として確認しておきたいことがあります。ホッピー(hoppy)であるということはホップが効いているということであって、単に苦いことではありません。ご注意を。
では、はじめましょう。
Today we get to talk about something that doesn’t usually play a significant role in sour beers… Hops! While hops are a critical component in the recipes for a vast majority of both the classic beer styles and styles developing in the American craft beer scene, they typically take a back seat in the formulation of sour beers. This is the case because when hops are utilized in the boiling process the bitterness they add can clash with the acidity developed in a sour beer.
今日はサワーエールではそんなにいい働きをしないと思われがちなものについてお話しようと思います。ホップのことです!ホップはクラシックなビアスタイル、革新を続けるアメリカンクラフトビールシーンのどちらでもレシピにおいて決定的に大事なものである場合が多いですが、サワーエールの設計や計算ではおまけに見られがちです。煮沸の時にホップが苦味を生み出しますが、その苦味が生成される酸とぶつかり合うためです。
In fact, when thinking about how ingredients in a food or drink recipe are utilized, one typically uses either sour flavors or bitter flavors to balance sweetness. In beer, the malt or other cereal grains provide sweetness in the form of both fermentable and non-fermentable sugars (often referred to as a beer’s “malt backbone”). When hops are boiled they produce bitter alpha-acids which then balance this sweetness. Without something to balance the malt, even light bodied beers would taste cloyingly sweet as well as bland and one-dimensional. Contrasting hop-bittered beers, sour beers utilize organic acids produced during the fermentation to balance malt sweetness. In this way, the flavor profile of many sour beers share commonalities with wine, in which natural acidity from the grapes balances both residual sugar sweetness and perceived ester sweetness also from the grapes.
事実、食べ物や飲み物のレシピ上で材料を活かそうと思ったら、通常甘みとバランスを取るために酸味か苦味のどちらかが用いられます。ビールの場合、モルトもしくはその他の穀物が発酵可能な糖分、不可能な糖分の両方の形式で甘みを生み出します。よく「モルトの骨格」などとビールでは言われるものですね。ホップは煮沸されると苦味のあるアルファ酸を生成し、それが甘みとバランスを取ってくれます。モルトとバランスを取ってくれるものが無いと、たとえどんなに軽いボディのビールでも味わいはのっぺりして単調なだけでなく、甘くてくどくなってしまいます。ホップの効いた苦いビールに比べ、サワーエールでは酸が発酵中に生まれますが、それがモルトの甘味を相殺してバランスを取ってくれます。ワインではぶどう由来の自然な酸が発酵後の残糖分、そして同じくぶどう由来のエステルの甘みのバランスを取ってくれるのであり、多くのサワーエールのフレーバーはワインとの共通点を持っているのです。
※美味しいビールで大事なのはバランスで、それは「苦味か酸味で甘さを中和すること」。
There are examples of beers in which a combination of bitterness and souring do taste good together, but these tend to be the exception rather than the rule. Gueuze, a style blended from lambics of differing ages, comes to mind. Some very good gueuzes can actually be slightly bitter in addition to being sour. Keep in mind that this is relative to no bitterness whatsoever. These gueuzes may contain on average as many as 10 to 20 IBU’s (International Bitterness Units, a way of measuring alpha-acid in a beer). When compared to styles like American Pale Ale (30-45 IBUs) or India Pale Ale (40-70 IBUs), we see that these sours are still significantly less bitter than many common types of craft beer.
苦味と酸味が共存していて美味しいビールの例はいくつかありますが、どちらかというと例外的です。酒齢の違うランビックのブレンドである「グーズ」を思い出して下さい。素晴らしいグーズには酸味に加えて若干の苦味があるものも実際にあります。覚えておいて頂きたいのは、これは全く苦味のないものと比較したものということ。こういうグーズは平均してIBU10〜20ほどの苦味が含まれています。アメリカンペールエール(IBU30〜45)、IPA(IBU40〜70)のようなビアスタイルのものと比較した場合、こういうサワーエールはよくあるタイプのクラフトビールよりも随分と苦味が弱いというのが分かります。
※グーズには苦味を感じるものもあります。これはそのグーズに若干の苦味があるせいですが、ホッピーなクラフトビールの「苦い」という感覚よりは相当弱いものです。「酸味と苦味の強いバランス」、ではありません。
Barrel aged stock ales which have been left to sour are another style of beer that can combine bitterness and souring in a pleasant way. A very nice example of one would be Bitter and Twisted Zymatore by Harviestoun Brewery. This is an English IPA that has been aged and allowed to sour in the barrel. Historically, all barrel stored (stock) British ales would have developed some level of souring and/or Brettanomycescharacter as they aged. These soured or funkified ales would sometimes be blended into young fresh beers to add flavor complexity and product consistency. I should note that the reason these soured stock ales tend to be pleasant is because while aging their bitterness level does decrease as their sour character increases. Don’t expect to find a sour version of an 80 IBU American Double IPA that tastes like anything but a train-wreck.
酸っぱくしようとして寝かせておいたバレルエイジビールは苦味と酸味の良好な調和を見せるスタイルの一つです。良い例としては、ハーヴィストン醸造所のBitter and Twisted Zymatoreでしょう。こちらは樽に入れて酸味を立てたイングリッシュIPAです。歴史的には樽で熟成させたイギリスのビールは全て熟成に伴ってある程度のレベルまで酸味やブレタノマイセスの風味を強めていったでしょう。このような酸のある、もしくはファンキーなビールは若いフレッシュなビールと混ぜて複雑味を増したり、商品の品質統一を行った場合もあるでしょう。指摘しておきたいのは、こういう酸のある熟成ビールが良い傾向にある理由は熟成中に酸のキャラクターが強まるにつれて苦味のレベルが減少するからです。IBU80のDIPAサワーエールバージョンがみつかるなんて期待はしないでください。列車の脱線事故みたいな味のものしかないでしょうから。
※一回の仕込みで苦く且つ酸っぱくするのではなく、「元々苦いものを樽熟成中に酸味を与える」ものをここでは評価しています。若いものと寝かせたものをブレンドすることで商品の均一性だけでなく、苦味と酸味を共存させることも可能だということです。「IBU80のDIPAサワーエールバージョン」はブレンドせずに一回の仕込みで苦く且つ酸っぱくするのは難しいという例だと考えて下さい。苦くて酸っぱいのが美味しくないと言っているわけではありません。
長いので、今日はここまで。続く。