さて、そろそろ「流通と品質」の話をしよう⑤ 出荷と倉庫の話
「さて、そろそろ「流通と品質」の話をしよう」という連載をしております。前回、前々回は輸入時のコンテナについて書きました。コンセントには気をつけた上でリーファーコンテナ一択だということでしたね。輸入元さんはリーファーコンテナを使っていたら是非裏ラベルにそう書いて下さい。それが消費者の皆さんに分かりやすいですし、選び取る際の一つの理由になると思います。
とはいえ。
裏ラベルに「リーファーコンテナ使用」と書いてあっても本当はダメです。なぜならば、「港までは定温輸送しましたよ」、「港に着くまでは高温に晒されてはいませんよ」という意味であって、国内輸送がちゃんとできているかどうかは保証してくれないからです。あくまでも、「港まで」の話です。
では、一般的なビールの流通経路を見ていきましょう。今回のお話は輸入ものだけでなく、国内の醸造所のビールも含めた一般的な国内流通のお話になります。図にするとこうなります。普通は醸造所から直接酒屋さんには届かない仕組みになっています。詳しくはビールの物流 正販三層を御覧ください。
【一般的なビールの国内流通経路】
醸造所や輸入元の倉庫→一次問屋→地方の二次問屋→街の酒屋さん→飲食店もしくは消費者
以前、大手のお客様相談室に電話して聞いてみたことがあります。(といっても2016年の話です。)
「ビール工場から出荷する時、夏場はクール便トラックなのですか?」
「通常、特約店と呼ばれる問屋のようなところに出荷する際は常温です」
はい、そういうことです。 注意)特約店やら「生特」の話はものすごく長くて複雑になるので今回割愛します。お許し下さい。
仮にものすごく気温も低く、常温でも大丈夫だったとしましょう。次に運ばれるのは問屋さんの倉庫ですが、そこではどうなっているのか?googleで「ビール倉庫問屋」などと画像検索してみてください。面白い画像が見られます。私が昔訪れた某超大手酒類問屋もだいたい同じ様子でした。
一般的に、ビールは商品回転スピードが早いので、倉庫が何階建てかの建物であっても一階に置かれることが多いです。その方が入荷作業も出荷作業も楽ですから。で、その一階というのはトラックの積み込みや荷おろしの作業場も兼ねているので、温度管理されていないのが普通です。外気そのまま。下手をすると日光が当たったりもしています。これが通常の物流の流れでは一次問屋、二次問屋と2軒は途中に入ります。危険です、実に危険。
フィルター済であっても日光はよろしくない。ケグや缶は完全遮光ですが、瓶ビールではいわゆる「日光臭」、英語ではskunky(スカンキー)と呼ばれる劣化臭が光によって生じます。温度以外でも品質を落としてしまう要因はあるのです。一般的なビールの流通を追いかけながらお話をしていますが、その「大量生産・大量消費」のライフスタイルに合わせた既存の物流方式にクラフトビールを安易に載せるのは危ないのではないか。そう思う例の一つです。