レフは修道院で作っていない・・・って今更?

今日投稿しようと思っていたものがあったのですが、こちらに切り替えます。ロイターのweb版に4月4日、こんな記事が出ました。いきなりすごいタイトルです。

Anheuser’s Leffe is not Belgian ‘abbey’ beer: U.S. lawsuit

ざっくり訳すと、「アンハイザー・ブッシュ・インベヴのレフはベルギーの修道院ビールではない、と訴訟に」とでもなるでしょうか。えー、何を今更。レフはインベヴの世界展開ブランドで、死ぬほど作っていますからね。小さな修道院で僧侶がちまちま作っているわけがない。そんなことは公然の事実であって、文句言うのは変だなぁ。美味しく作ってくれればどうでもいいことだと思うんだけど・・・と読んでいて私個人は思いました。訴訟が好きな国ですねぇ、本当に。

詳しく内容を見ていきましょう。本文の冒頭を少し引用します。

Anheuser Busch Inbev SA (ABI.BR) has been sued by a U.S. beer drinker who claimed he was duped into believing its Leffe brand beer was brewed in a Belgian abbey, rather than mass produced in an automated factory that also makes Stella Artois.
インベヴがアメリカのビール飲用者から訴えられています。彼らの主張はレフブランドのビールは実際ステラアルトワ同様、自動化された工場で大量生産されているものにもかかわらず、修道院で醸造されたものだと信じこまされていた、というもの。

レフブランドの公式サイト、leffe.comを見ると「今も修道院で作っています」とは書いていない。確かに勘違いさせそうな文言だらけですが、「かつて修道院だったこと」と「その伝統とビアスタイル」をブランドイメージ化しているだけだと思うわけです。結果的に美味しいものであればどこでどう作ろうが構わないと思うのは変でしょうか?ちなみに、この訴訟は決着しておらず、インベヴ側も特にコメントしていないようです。

文中に「Beck’s事件」のことも書いてありますね。Beck’sといえば有名なドイツのビールですが、アメリカ国内で流通しているものにはセントルイスでライセンス生産されている国産品もあります。“German Quality” や “Originated in Bremen, Germany,”という説明書きが宜しくなかったようです。「ドイツ産じゃないじゃん!騙されたー、お金返せー」という話が昨年あって、実際返金することになりました。昔同じようなことが「アメリカ産キリンビール」についてもありましたね。

まぁ、これを言い出したら、世界中訴訟だらけになってしまいます。修道院のライセンスを受けて別の場所で作っているベルギーのアベイビールなんてたくさんあります。
日本も例外ではありません。国内で流通しているレーベンブロイやブルックリンラガーの樽生ビールは日本で作っていますし。そもそもビールに限った話でもなくて、たとえば、ウォッカのスミノフはロシアじゃなくて韓国産だったり。枚挙にいとまがないとはこのことです。

大手のビールと小規模生産者のクラフトビールは事情が違うかもしれませんが、ライセンスやブランドという点で「国や地域」と「現物であるビール」の繋がりをこれから私たちはどう捉えれば良いのでしょうか?アメリカを代表する醸造所、stone(ストーン)はすでにドイツ・ベルリンでビールを作っています。日本の観光地のおみやげビールが縁もゆかりもない遠くで作られていたなんてこともありました。上記リンク先でも書きましたが、クラフトビールはグローバルな存在で、ベルギービール、ドイツビール、アメリカビールなどという形で国による分類をするのはそろそろ無理なのではないかと私は思うのです。皆様、どうでしょうか?

長々書きましたが、話は非常にシンプルです。どこの国にも美味しいものを作る人はいるけれど、特定の国で作られていれば必ず美味しいなんてことは絶対にない。今目の前にあるこのビールが品質が高く、美味いかどうかが何より大事だと思います。国やスペックなどは後で調べても遅くはないと思うのです。美味しさを担保した上での物語でなければ意味が無いでしょう。

ちなみに、レフも状態さえ良ければ美味しく飲める良いビールだと思いますよ。状態さえ良ければ。ここが難しいのですが・・・。