ホップヘッズの皆さん、IPAはもうダメかもしれません(2/4加筆あり)

Feb 2, 2016

先日こちらを投稿しましたが、一部誤解を招くような表現がありました。誇張気味であったことも否めません。その点についてまずはお詫びするとともに、以下加筆・修正を致します。お目通し頂ければ幸いです。新たに加えた部分は分かりやすいよう、緑字と致します。今後妙な偏りの無いよう重々注意して参ります。(2/4加筆)

非常に申し上げにくいのですが・・・タイトルのとおりです。IPAはもうダメかもしれません。少なくとも、そういう傾向が2016年は顕著になることがすでに確定済みです。お悔やみ申し上げます。

IPAの人気が落ちたというお話ではありません。相変わらずIPAは世界的に人気であることは間違いありませんし、ものすごい量が生産され、そして消費されています。しかし、IPAにとって大事な要素であるホップは危機的状況にあります。順を追ってご説明しましょう。

まずはこの記事を是非ご覧ください。ホップの主要産地はヨーロッパ以外にアメリカが挙げられます。特にワシントン州のヤキマバレーはその中心です。アメリカ政府機関の発表によると2015年のホップの作付は前年に比べて11%も増加しました。ホップ農家は年々作付、収穫を増やし、収益も上がってきています。クラフトビール人気を受けて、農家は売れるもの、人気のあるものを生産しようとするのは当然の流れでしょう。故に、「醸造家に人気のものに生産を切り替える」ことになります。特徴的なホップに顕著な動向です。これは「優秀ではあるが、地味な品種や人気の落ちてきた品種はやめる」ということでもあります。今までレシピ上で重要な役目を果たしていたホップが打ち切りになる可能性も否定できません。特定のホップに依存した銘柄は今後作れなくなるかもしれないのです。

USAHOP.ORGという団体の資料を確認すると、作付面積もアメリカ全体で15%増加しています。栽培されている品種はここ数年で随分変化していますので、こちらのPDFをご覧ください。この中に州別、品種別に過去5年間のデータがあり、増減が確認できます。減少傾向のもの、データが無いもしくはデータが取れないほど少ないものもあります。逆に伸長著しい品種もたくさんあって、トータルの収穫量は増えているわけです。人気のなくなりつつある品種は確かにあって特定のホップに依存したビールが今後作れなくなるかもしれないということは可能性として否定出来ませんが、その分新しい品種もどんどん投入されていて一定の選択肢は確保されているとも言えます。

日本ではあまり紹介されていませんが、2015年は非常に暑い日が多く、ホップ産地はかなりダメージを受けました。記事でも指摘されている通り、ドイツなどでは収穫量がかなり少ないのです。その結果起こるのは「ホップの買付け価格の上昇」。醸造所はホップが無ければ生産が出来ないので、その分が販売価格に上乗せされることでしょう。IPAの価格上昇は避けられないというのが大方の見方です。

ドイツの収量が減少しているのは間違いないですが、栽培されているホップはハラタウやザーツなどが主な品種です。アメリカンスタイルIPAにはまず使われない品種で、大手のピルスナータイプのものには多く用いられます。大手が使用する量は半端ではないので、結果としてホップ価格は上昇するでしょう。しかし、それはコモディティとしてスタンダードなビール全体の製造原価および販売価格の上昇を促すのであって、IPA単体を取り上げるのは適切ではありませんでした。この点につきましてはお詫び申し上げます。

さて、日本はどうしましょうか?日本には商業醸造をまかなえるほどホップ農家もホップ畑もありません。ホップ関連の組合もなく、国内生産、国内消費のインフラが整っていません。ホップは基本的には輸入品なのです。生産国やその周辺でホップが買い付けられてしまったら、日本には回ってこなくなってしまいます。もしくは、異常に高い価格で買うしかない状況になってしまうかもしれません。輸入コストもあるので、海外の醸造所の値上げくらいでは済まないと私は思います。ホップヘッズの皆さん、IPAはもうダメかもしれません・・・

事実、クラフトビール人気を受けてホップ価格は年々高騰しています。海外のホップ会社に直接買付ければ量を確保出来る可能性が高いです。欧州、北米以外に南半球産のホップも近年注目を集めていて、そちらも併用する形になるかもしれません。単独買付け出来るくらいの購買力とルートを確保出来れば、という条件付きですが。国内大手4社がクラフトビールカテゴリー参入を始め、これから本気で人気のホップを買い付け始めるでしょう。少量ずつ単発で欲しいとなるとホップを取り扱う国内商社頼みになり、欲しい品種が必要量手に入らない危険性は高いです。総じてIPAに限らずという話になります。国内のクラフトビール醸造所の多くはしんどいのではないかと思います。

私個人としては「ビールはホップのお酒ではなく、麦のお酒」だと思っています。ホップの風味はモルトのベースがあってこそ、という認識です。ホップ不足をきっかけに「ホップの弱い、モルティなビール」に注目してはどうでしょうか?ベルギーやイギリスのクラシックなビールを再発見する良い機会だと考えています。

世界一のビアパブにベルギーの酸っぱいビール”ランビック”を飲みに行った話も書きました。→世界一のビアパブに行ってきました!(うちのめされた編)

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