カスクコンディションビールを飲みながら、〆鯖のことを考えた

Jan 18, 2016

東京・両国の麦酒倶楽部ポパイさんにお邪魔し、カスクコンディションビールを10種類ほど試して参りました。強制カーボネーションしたケグ詰めのものとは全く違い、カスクのビールは非常に面白かったです。いつまでたっても、いくら飲んでもビールは本当に飽きません。

カタカナが多くなってしまったので、少し整理しておきたいと思います。ビールの容器にはいくつか種類がありますが、業務用では「瓶」だけではなく「樽」も使われています。昔は本当に木製の樽だったのでしょうが、現在は金属製のものが一般に流通しています。

Keg_geschnitten

ビールにおいては樽は二種類に分けられます。一つは「ケグ(keg)」と呼ばれるもので、写真のように中心にパイプが通っています。詰められたビールの上面をガスで押して下からパイプを通して組み上げる方法で抽出します。(ガスがビールに触れるため、ビールにガスが溶け込みます。発酵によって生まれる自然なガスをナチュラルカーボネーションと呼ぶのに対して、こちらは強制カーボネーションと呼びます。)通常、樽といえばこちらを指します。

もう一つは「カスク(cask)」。カバー写真のように丸い面が横になるようにして使われます。ケグのようにガスを押し付けて抽出するのではなく、重力を利用してそのまま出すグラヴィティ(gravity)やハンドポンプで組み上げる方法が採られます。最近ビアパブでリアルエールが少しずつ普及してきているので、ハンドポンプをご覧になったことがある方も多いのではないでしょうか。(リアルエールについてここでは詳細に述べることはしませんが、ご興味ある方はこちらを御覧ください。イギリスのCAMRAのHPです。)

「コンディション(condition)」は状態を整えると言った意味で使用され、イギリスの伝統的なパブではビールをカスクに詰め、お店でホップを追加したり、清澄剤を入れてきれいな状態にする、つまりカスクコンディションして提供しているそうです。ちなみに、ビールを置いておくところはセラーと呼ばれ、その管理を受け持つのがセラーマンとなります。

伝統様式であるカスクコンディションビールを今飲むこと自体に意味があると思いますが、私個人としてはもう一つ考えたいことがあります。

セラーマンは職人であり、その職能を評価すべきであろうということです。お店でビールをカスクコンディションすることは「入荷したビールを理解して具合を常に監視し、最良の状態を見極める作業が発生する」ということでもあります。酒質の理解や狙っている味わいのイメージ、それを具現化するためのホップ選び、提供のタイミングの見極めなど経験や技術が相当に求められるものです。

カスクコンディションビールを飲みながら、「あぁ、〆鯖作りに似ているなぁ」とふと思ったのです。仕入れてきたものをそのまま出すのではなく、一手間かけるということもそうです。レシピ通りに作っても材料の鯖が一定ではないので、結果は変わります。酢、砂糖の量や引き上げのタイミングなど、その微妙な調整、さじ加減に職人技が光る。ビールをコンディションするということも職人の領域なのだと思ったのでした。〆鯖の調理が上手な和食屋さんは職人として評価され、雑誌やメディアでも評判になったりします。でも、まだビールのコンディションに関する職人技のことは全然聞きません。仕入れ能力や銘柄自体とは全く違う次元の話として、カスクコンディションに限らずビールに対してお店側で施すものについて評価する必要性があると思います。

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