モダンタイムス、サンディエゴのブルワリーを閉鎖

非常に寂しいニュースが入ってきました。日本でもお馴染みのモダンタイムスがサンディエゴにある醸造所を閉鎖し、委託醸造専門の工場となります。

San Diego’s Modern Times Beer Shutting Down Original Brewery And Shifting To Contract Brewing

コロナという未曾有の危機があったけれども、それまでの拡大路線で借入が多かったり、metoo運動の中で差別問題で揉めたり、色々あって身売りすることになってマウイブルーイングを擁するクラフトオハナ傘下になったのがつい2年前のことです。激動の数年間だったことでしょう。

ティルレイやカナーキーなど新興グループが買収を通じて拡大しており、私はクラフトオハナもその一角を占めると見ています。これらはビールだけでなく様々なお酒、飲料を手掛けており、多角的な商品ポートフォリオです。委託醸造専門の工場にすることでグループ全体にプラスになると判断したのでしょうから、ここからどう動いてくるのか注目したいところ。

ちなみに、アメリカのクラフトビール全体の伸長は鈍化しており、頭打ちだと言う人も出てきています。(コロナの影響も当然考慮しなければなりませんが、BAの年間データをご覧頂くと分かる通り、新規開業が少なくなっていてブルーパブ・マイクロブルワリーの閉業が増えています。また、金額は伸びたものの数量は減っています。)

その裏でハードセルツァーをはじめとするお酒が人気を博しており、ブルワリーの他ジャンルへの参入も盛んです。それはボストンビアカンパニーのような大手だけでなく、新興グループもその方向で進んでいて、ビールに主軸は置きつつも、いわゆるBeyond Beer(ビヨンドビール)にも手を広げた総合飲料メーカー化の流れは既に来ていると考えるのが妥当でしょう。参考までにビヨンドビールに関して私が発表したものを挙げておきますのでよろしければお目通しください。

①東洋経済に寄稿したビヨンドビールの解説記事 ”サントリー「一線を超えたビール」が意味すること”
②ハードセルツァーの詳しい解説本(Kindle) Hard Seltzer and Japan
③総合的なビヨンドビール解説本(Kindle) Beyond Beer クラフトビールのこれからを考えるヒント

さて、日本はどうでしょうか。クラフトビール市場が現状どれほどで、まだまだ伸びるのかをまずは検討しなくてはなりません。その上で、飽和状態を見越して多角化の一手を打つことになるでしょう。日本にはレモンサワーに代表される最強RTDの缶チューハイがあり、大手が完全に市場を押さえていて隙間が全くありません。では、多角化する際にどこに向かうべきか。これは広く議論されるべきポイントかと思います。

仮にその一つがウイスキーだとすると、先行事例として長浜浪漫ビールや木内酒造があります。現金化までに時間がかかるウイスキーですが、ジャパニーズウイスキーの評価が高まっている今、こっちの方向も考慮しておくべきかもしれません。また、果実酒ならば、ビールとワインの醸造も行う茨城県の麦と葡萄という先行事例も。これから開業される方はこういう視点でマーケットを眺めておくと良いのではないかと思います。