凄腕集団「ペンタグラム」で考えたお酒のデザインとコミュニケーションの話
先日のことです。色々な職業の方が集まるオンライン飲み会に誘って頂きました。ビール飲みながら参加者の1人であるプロのデザイナーさんと話をしていたら、ふと「Pentagram(ペンタグラム)が本当に好きなんですよ」と仰ったのですよ。
、、、ペンタグラム?
、、、あのデザイナー集団のペンタグラム?
「あー、持ってる持ってる!!」と一冊の本のことを思い出し、本棚から引っ張り出してきました。
えー、それですよ、それ。なんで持ってるんですか?
と言われましたが、随分前にあまりのかっこよさに一目惚れして買ったのです。1992年発売の第4版だったので買ったのは中学生の頃だったのかしら。買ったのは丸善か紀伊国屋か、いや青山のクレヨンハウスだったような気もするな。まぁ、何にせよ気がつけばもう30年近く前か・・・ちょっとセンチメンタルになりますね。
ものすごく洗練されたイラストの数々を使った頭の体操の本で、擦り切れるほど読みました。何度も読んでいるから答えも解法も全部知っているのですが、それでも魅力が失われることはありません。なんだかこう、憎いくらいいちいち素敵なのです。良いデザインにはどこか人を惹き付ける普遍的なものがあるのかもしれないなぁ。
今調べたらamazonで買えるそうなので、気になる方はどうぞ。ただ眺めているだけでも楽しいし、お子さんなんかと一緒に解いてみるのも面白そうです。
さて、ペンタグラムをご存知ない方もいらっしゃると思いますが、彼らは数々のプロダクト、建築、ファッションなどを幅広く手掛ける凄腕デザイナー集団です。ペンタグラムの存在をご存じなくてもお酒好きの方なら実は結構見ていると思います。BB&R(ベリーブラザーズアンドラッド)やDaftmill(ダフトミル)、KIKORI(キコリ)、Krug(クリュッグ)などなど。
クラフトビールファンの方も一度は見かけたことがあるのではないでしょうか。実はイギリスのBrew By Numbersのラベルを手掛けているのもペンタグラムなのです。上記リンク先のページの途中に出てくる“Learn more about the project”の部分も是非読んでください。ブルワリーのコアな美学、価値を表現するにあたって大いに参考になると思います。
Brew By Numbersのデザインは以前からカッコいいなぁと思っていて、以前ここでも取り上げたことがあります。中身に負けないカッコ良さ、見た目に負けない説得力という文章も合わせてお目通しください。そこで「クラフトビールにおいて美味しいことは大前提ではあり、その上でどのような世界観をそのプロダクトを通じて表現していくかが重要である」と書きました。ロゴやネーミング、そしてパッケージデザインも世界観の表現に必要なものであり、それらを軽視していては消費者、飲み手に感動は届かないと考えます。
すでに多数報道されているように家飲みが増え、瓶や缶の出荷数が急増しています。実際instagramを見てみると、ご自宅で飲んだビールの写真をアップなさっている方がとても多い印象です。樽生のクラフトビールが全然インスタ映えしない問題で指摘した「ビジュアル的に映えるビール」という意味では樽生には出来なかったことが家飲みの瓶や缶では達成できますね。ラベルが必ずあるので、写真を見た方に何を飲んでいるのかが伝わります。根岸先生の「#ビールめし」が示しているように、instagramと家飲みのクラフトビールは相性が良い気がします。
今後コロナウイルス禍が落ち着いてきても家でクラフトビールを飲むという行為が広く定着するとすると、パブという「ブランドが発信する世界観の代弁者」がいなくても伝わる何かをブルワリーはちゃんと用意しておかねばならないでしょう。酒販店を通さずに消費者に直販することを推進するならば尚更必要だと思います。パッケージデザインを含め、ビジュアルは飲み手と繋がりを生むコミュニケーションポイントとして今後重要性が高まるような気がしてなりません。
そうそう、CRAFT DRINKSが応援しているFull Sail Brewingから見た目もかっこいい新商品がリリースされます。Coming Soonなのです!!