楽天が共通の送料無料ラインを導入するとクラフトビールの地域格差は拡大するかも

Feb 10, 2020

多数報道されているのでご存じの方も多いと思いますが、国内大手ECモール・楽天が共通の送料無料ラインを設定してより買い物をしやすくしようと動いています。

楽天、「共通の送料無料ライン」導入を2020年3月18日と発表

施行となれば強制的に出店者に送料分のしわ寄せがいくので、独占禁止法が禁じる「優越的地位の乱用」に当たるとして出店者が公正取引委員会に調査を依頼し、実際に調査が始まりました。

巨大ITに出店者の怒り頂点 楽天の通販送料無料化、公取委に調査要請
公正取引委員会からの調査開始及び調査への協力について

商品の種別を問わず、少なからず影響のある話だと思います。消費者の買いやすさや利便性向上は重要だと思うものの、強大なプラットフォーム側と出店者の間の若干歪なパワーバランスが浮き彫りになりました。このままでは競合するECモールに負けてしまうという危機感の現れだとも感じます。私個人としてはどの立場の主張もそれなりに理解出来るので悩ましいのです。

この事象をクラフトビールの視点で見てみると、かなり深刻と言わざるを得ません。ほぼ詰んだと思います。商品性質上仕方ないのですが、認知が上がってきている今ブレーキを踏まないで欲しいなぁと思ったり。

楽天でクラフトビールが詰んだという理由を挙げていきましょう。そもそもビールは「重くて嵩張るのに単価は安い商品」です。大事なポイントなので押さえておきましょう、「ビールは重くて嵩張るのに単価は安い商品」なのです。通販で主に扱われる瓶や缶では破損の危険性もあります。また、要冷蔵であることも多く、取り扱いが非常に面倒です。重くて嵩張るから送料が高く、更に品質保持の必要からクール代もかかります。中身の商品代金の割に送料がめちゃくちゃ高いのです。

では、楽天の送料無料化はクラフトビールに追い風だろうと思いたいところなのですが、そうもいきません。楽天出店者は送料を商品代金に含む形で設定するわけですが、ビールは元々単価も低めで粗利が多くない商品です。そのため、送料を賄うなら利益を削るしかありません。そこで楽天に出店している酒屋の経営者は考えるわけです。

3980円で送料を賄ったら利益はどうなるのか?

ちょっと電卓を叩いてみればすぐに分かるわけですが、このルールをクラフトビールに当てはめるのは無理なのです。まともな経営者なら大幅な値上げをするか撤退を考えると思います。送料無料ラインを守るならば届く本数を減らして実質値上げをせざるを得ない。たとえば今まで6本で3980円だったのが3本になるのではないだろうか。まぁ、クラフトビール通販からは撤退でしょう、普通に考えて。

かと言って、楽天からクラフトビールが消えることはありません。醸造元であるブルワリーが自前で出店している場合、酒販店と違ってメーカー直販ですから中間流通を挟まない分粗利額が大きい。利益構造が酒販店よりも有利です。大幅値上げをせずに送料無料に対応できるとしたらメーカー直販の形態しかないでしょう。一般の酒販店がクラフトビール販売から撤退していく中、有利な条件で戦えるのでブルワリーの直販は増えると私は思います。

じゃ、結局送料無料で買えるじゃん。うれしいな

と喜ぶのはまだ早い。メーカー直販ということは「自社ブランドのみ」という意味であり、「色々なブルワリーのものをバラ1本ずつ混載して送ってもらう」のが不可能になるということなのです。クラフトビールには様々な種類があるから色々なブルワリーの色々なタイプのものを飲んでみたいというのが人情です。とりあえず気になるものを片っ端から1本ずつ買いたいと思う人は多いはずです。よっぽど好きなものでも無い限り1ケース同じものが届いても困ります。ましてや初めて試すブルワリーのものは未体験だからこそまずはちょっとだけ試してみたいわけで。

複数ブランドを在庫していてバラ混載してくれる酒販店が撤退するので1小口でまとめてくれるところが無い。各ブルワリーの楽天ショップをそれぞれ巡り、それぞれ決済して買うことになります。絶対面倒くさい。私なら面倒になって「あー、もう。もういいや、買うのやめた」となってしまう。送料無料化ライン導入で分かりやすくなるのかもしれないけれども、ルールと商品特性がマッチしないのでクラフトビールファンにとっては逆に買いにくくなることでしょう。

その点では自社在庫を持っているamazonの方が有利かもしれない。amazon prime会員なら送料の問題もクリアされます。ただし、現在amazonが自社販売している種類は決して多いとは言えません。早く届くし楽だけれども、小さな作り手のものはamazonでは手に入らないので色々飲んでみたい人には合わないでしょう。

あっちを立てればこっちが立たず、ということでなかなかうまくはいきません。厳しいなぁ・・・

繰り返しになりますが、ビールは「重くて嵩張るのに単価は安い商品」で、通販には元々向かない性質のものなのです。送料の割合が非常に高く、ただでさえ安くないのに送料のおかげで割高感はものすごいことになります。だから、これからのクラフトビールはリアル店舗が極めて重要なポジションになるのではないかと予想しています。クラフトビールを多数扱うイケてる酒販店がある地域では豊かな家飲みライフが送り易いけれども、そうでない地域はかなりの経済的コストをかけないと同程度のことは出来なくなってしまう。そこまでコストをかける人はどれだけいるだろうか。私にはちょっと想像出来ないのです。結果としてものすごい地域格差が生まれるのではないか。そんな気がしてならない。



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