クラフトビールの多様性に関するCRAFT DRINKS的な捉え方

Nov 15, 2019

クラフトビールの良さは多様性だ、などと言われることも多い。実際、雑誌やwebの記事でそういうフレーズを見たことのある方も多いと思います。「クラフトビール 多様性」などとインターネットで検索すればそれっぽいことを書いているものは恐ろしいほどとあるわけです。たとえばこんな感じではないでしょうか。

ビールといえば世界的主流は「ピルスナー」。そのピルスナーが主力商品である大手ビールメーカーのものだけ飲んでいては分からないけれど、世界にはたくさんの種類のビールがあり、ビールのスタイルは100種類以上あるとも言われます。クラフトビールの面白さの一つは多様性です。

長年このような主張に対して懐疑的でした。今もそうです。それには理由があります。

日本のみならず、世界のビール消費において中心がピルスナータイプであることは事実です。しかし、ピルスナーだけを作っているわけでもないし、世界のクラシックなスタイルのものも結構作られています。日本でも以前から大手ビール会社が世界中のクラシックなものを解釈したものを製造・販売しています。季節限定品、数量限定品が多いですが、こういう取り組みが長い間続けられているのです。下記のものなどはスーパーなどで見かけた記憶があるのではないでしょうか。

TOKYO CRAFT(東京クラフト)〈バーレイワイン〉

上記はサントリーのものですが、各社様々なスタイルのものを毎年作っています。ここで挙げることは避けますが、是非調べてみてください。確かに普段目につくものは圧倒的にピルスナータイプなので勘違いしそうになりますが、ピルスナー以外もそれなりに作られているのです。これら大手のものが集合としてビアスタイルの多様性を体現しているかについては言及しませんが、少なくとも単一ではないと考えています。「大手=ピルスナー」VS「中小=クラフト=ピルスナー以外を色々と」というような対立構図に落とし込むことはちょっと乱暴かもしれないと思う次第です。

よくよく考えると、「そもそもビアスタイルって何?」という素朴な疑問に答えてくれるものが無いような気がします。「ビアスタイルとはビールのスタイルだ」という同語反復を前提とした上で話が進んでいる気がしてならないのです。おそらく認識を共有している気がしているだけで、結構な割合で噛み合っていないのではないかと想像するわけです。

ビアスタイルという語の概念は2つに分けて考えるべきだと思っています。狭義の「品評会用の厳密に規定された言葉」と広義の「世間一般に使われている言葉」です。その違いについて詳しい説明がないまま独り歩きしてしまったせいですれ違いが生まれているのであろうと考えます。

BJCPを始めとするスタイルガイドは品評会においてガイドとして利用されることを前提にしており、出品するビールは出品者によって相応しいカテゴリーにエントリーされます。そして、そのカテゴリー内で基準に沿って審査し、優劣をつけることになります。人間が味わって評価するけれども、審査員には共通する評価軸が無くてはなりません。それが狭義の「品評会用の厳密に規定された言葉」としてのビアスタイルです。比重や色味など数値化されたものもあり、客観性も一定程度あります。これに対して世間が使う広義のビアスタイルという言葉は非常に曖昧で情緒的です。

ビアスタイルガイドラインにスタイルとして存在するかどうかは実は本質的な問題ではありません。そもそもスタイルガイドは過去の歴史をまとめたものであって、言うなれば「過去完了形」です。現在進行形で進化し続けるビールを表したものではありません。また、未来永劫変わらないものでもないし、解釈が変われば当然分類方法も異なります。どこかの誰かが分類した種類がたくさんあることが多様性を担保する根拠にはならないような気がしてなりません。

クラフトビールにおける多様性はブルワーのクリエイティビティと、新規参入と意見表明を拒まない風通しの良さではないかと考えています。国や地域に根ざすと言うよりはもっとパーソナルというかミクロな話で、つまるところ「個人」だったり「チーム」にフォーカスされる世界なのではないかと思うに至ります。スタイルがたくさんあることが多様性でもある気はしないでもないけれども、多くのプレーヤーと多くの意見、そして解釈が存在出来ることこそがその前提ににあるような気がしています。

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