ワールドカップラグビーを観て思った、ファンになってしまう理由

13日に日本対スコットランドの試合が行われ、日本が勝って決勝リーグ進出を決めました。開催前に掲げたベスト8入りを果たしたわけです。すごい。

正直なところ、これまでラグビーにはあまり興味がありませんでした。しかし、ニュースのダイジェストだけでも「うわー、すごいな、こりゃ」と驚き、一気に惹きつけられました。まぁ、にわかです。ジャッカルなんてプレーのことはつい先週知ったし。

ここで選手たちの凄さを語る必要もないと思いますし、ちょっと興味を持ち始めた程度の私にその能力はありません。そういうことはNumberで読んでDAZNを観てください。今日はにわかの私だからこそ感じたことを綴っておこうと思います。

テレビ放送の前に一流選手やプロによる素人向けのルール解説や見どころのポイントを教えてくれるコーナーがありました。また、ワールドカップラグビーの前に数多くの特集番組が組まれていました。「ふんふん、なるほど。」と思わせてくれるし、知らなかったルールのことを学習する機会を得たというのはとても良かったと思う。そして、実際開幕してみると世界最強クラス同士の試合は異常なハイクオリティで、とにかくアツい。「あ、今ノックオンした!」とか「オフロードパスだ!!」とか、まぁ憶えたばかりの言葉を使いたいだけなのだけれど、奥さんに冷たい目線を向けられながらもテレビの前で叫んだりもした。

ビール飲みながら自宅で試合を見ていた時にふと我に返りました。自分の変化に気が付いたのです。

あれ?ラグビーの楽しみ方がいつの間にかちょっと分かっちゃってるかも

もちろんファン歴1週間なのでまだまだ大したこともないのですが、急激にラグビーに親近感を持ちましたしゼロだった理解が大きく進化しました。ちょっと引いて考えてみた場合、よく出来た仕組み、枠組みでラグビーを伝えているのだなぁと思ったのです。興味のなかった私をこんなに短期間でラグビーに惹き付けることが出来たのは何故かがなんとなく分かった気がします。

ファンになってしまう理由に浮かんできたポイントは3つ。「コンテンツの圧倒的なクオリティ」、「複雑なものを簡単に伝える能力の高さとその権威性」、「過去からの文脈による意味の強化」です。これらが3つとも欠けること無く揃っていたから私がファンになってしまうのは必然だったのかもしれない。

まず、「コンテンツの圧倒的なクオリティ」について。これは説明が不要でしょう。大男15人ずつ、総勢30人が繰り広げるハードなプレイには人を惹き付ける圧倒的な魅力がありました。とにかく凄い。問答無用です。開幕直前世界ランク1位のアイルランドにも勝ってしまったし、スコットランドを破り決勝リーグにも進出しました。日本代表は有無を言わさぬ結果も出していて唸るしかないのです。

次に「伝える能力の高さとその権威性」。ワールドカップラグビー直前に徹底的に各メディアがラグビーに関する番組を放送したことと、複雑なルールを分かりやすく解説したものがたくさん出てきたことがあると思います。たとえば、youtubeのおすすめに出てきた下記の動画は非常に分かりやすいし、ビジュアルデザインも秀逸だ。

報道自体も良いのだけれど、更に良かったと思うのは代表選手の人となり、パーソナリティ、これまでの歩みについて追い掛けたドキュメンタリー風のものがあった点ではないかと思う。リーチ マイケル選手がニュジーランドからはるばる留学で北海道に来たことは全然知らなかったし、好きな歌は演歌なのを知るとなんだか急に親近感が湧きました。実際試合が始まってみると元代表選手などの一流の方々がアツく、でも素人にも理解できる形で今目の前で繰り広げられる複雑な攻防を解きほぐしてくれました。事前に詰め込んだ知識の答え合わせが権威ある解説によって裏付けられ、頭の中に一気に定着したのでした。その筋の一流の方々が素人に分かりやすく語ってくれることは本当に有り難い。

最後に「過去からの文脈による意味の強化」について。かつて日本代表はニュージーランドに100点差以上付けられて大敗を喫したわけです。ハフィントンポストの「128点差の大敗から24年。ラグビー日本代表はいかに復活したのか」に詳しいので是非ご覧頂きたいのですが、1995年の大敗から何を学び、何をどう修正して強くなってきたかを一つの流れにまとめて今大会までに繋げているわけです。歴史の記述と言い換えても良いかもしれません。ただ単に世界の強豪国に勝ったのではなくて、何故勝てたのかとかこの勝利にどういう勝ちがあるのかという視点が生まれて、意味が強烈になったとも感じました。こういう話をたくさん露出させたことも私をファンににした大きな要因だと思う。

選手だけでなく、メディアなどの周辺の協力があって私のような素人が数多くラグビーに興味を持ったことでしょう。日本代表がどういう結果をこれから残してくれるのか期待が高まるわけですが、ワールドカップが終わった後ジャパンラグビートップリーグを観に行く人が増えたらいいなぁと思います。私のような人間ですら一度生で観戦してみたいと思ったのだから。

さて、ラグビーはワールドカップというチャンスを活かして認知向上・ファン増加を果たしました。マーケティング的な視点で考えた場合、その手法として「コンテンツの圧倒的なクオリティ」、「複雑なものを簡単に伝える能力の高さとその権威性」、「過去からの文脈による意味の強化」という3つのポイントがあったように思います。私はビール屋さんなのでこの手法がクラフトビールにも応用できないだろうかと考えたのです。ビールにもものすごい魅力があるのは間違いない。だからこそ、高い品質を担保した上で伝えるべき本質とその伝え方について私たちは大いに議論しても良いのではないだろうか。じっくり考えてみる価値がありそうな気がしています。