カタカナのクラフトビールの意味

Feb 19, 2018

クラフトビールがだんだんと浸透してきて、全国各地でビール祭りも開催されるようになりました。今春の免許要件の変更を前に醸造所の数も増えており、専門店もかなり増えました。紙媒体、web媒体共にクラフトビールやブルワリーを取り上げることも多く、とりあえずそれが何かは分からなくとも聞いたことがあるという人はかなり多いだろうと予想します。実際、肌感覚としてブームの真っ最中だなぁと感じるのです。

さて、少しずつマニアだけのものでなくなってきたクラフトビールですが、「大手ビール会社がクラフトビール進出」をしています。いや、大手が進出して露出が高まったからマニアだけのものでなくなってきたのかもしれませんね。うーん、どちらが先だったのか判断は難しい。まぁ、とにかく、「大手ビール会社がクラフトビール進出」というのは一見矛盾した表現のようで個人的にはとても違和感がありますが、一般にはそういうことらしいのです。

以前、“craft beer”と”クラフトビール” 定義の流用は難しいでも示した通り、アメリカの醸造者組合Brewers Associationの定義に沿った形でカタカナのクラフトブルワリーを扱うのは難しいと思います。とはいえ、日本では何を以て「クラフトブルワリーなのか?」、「クラフトビールなのか?」を確定させないまま何となくここまで来てしまいました。言葉が独り歩きを始めてしまった以上、もう引き返せない状況でしょう。

ですから、カタカナの「クラフトビール」という言葉は発言者によってバックグラウンドが大きく異なり、その意味合いにも随分差があるように感じます。そんな状況の中、CRAFT DRINKSは用法の1つとして「クラフトビールとは高いもの全部をざっくりまとめたもの」というニュアンスがあることを発見しました。先に断っておきますが、現在進行形のシーンにおける1つの面を言葉にしただけで、偉そうに私が定義しようと思っているわけではありません。そして、例外なく網羅したものでもありません。あしからず。

理由を挙げましょう。前提として1つ押さえておいて頂きたいのはプレミアムビールカテゴリーというものです。大手ビール会社の商品構成の中で、スタンダードより価格が高い高級路線のものをお酒の流通業界ではそう呼んでいます。具体的にはコンビニ店頭で350ml缶で230円くらいで販売されているゾーンです。これに対して「クラフトビール」、「クラフトカテゴリー」などと近年呼ばれているものが出始めています。これはプレミアムビールよりも更に価格が高いもので、大手流通などの業界的にはビアスタイル等にかかわらず全て「クラフト」扱いです。ラガーが中心のプレミアムビールカテゴリーとの差別化を図ってか、エールタイプが多く、特定のホップをフィーチャーしたものも見ます。

多くの紙媒体、web媒体、そして流通系の方々のニュアンスとしてもプレミアムビールより高いものは基本的に全部「クラフト」。そう捉えると辻褄が合いますので、お手元にある書籍などを見返してみて下さい。この意味合いで使用している例が極めて多く、世間の認識やシーンの流れの捉え方として大きく間違ってはいないでしょう。誰がどういう意味でクラフトビールと言っているのか瞬時に判断するのは難しいかもしれませんが、今のところ「世間ではプレミアムビールより高いものと言う意味で使うこともかなり多い」と思います。

さて、以前、take craft back運動についてご紹介した際、こう書きました。

「大手なんかより、クラフトっていいよね!」と考える人がそこそこいて、その結果シェアは大きく拡大し順調にシーンは盛り上がってきました。しかし、買収が進むにつれ、クラフトブルワーには当てはまらないけれども「大手傘下の元クラフトブルワー」が今まで通り美味しいものを醸しているという事実が顕在化してきました。「独立性」が揺らいでくるわけです。そういう論理的には微妙な存在がここ数年顕著になり「クラフトブルワーとは何ぞや?」という命題自体が大手によって立てられなくなりつつあるという懸念が感じ取れます。要するに、「まぁ旨いビールだし、クラフトにこだわる必要ないんじゃないの?」という意識がシーンに影響を与えるほど出てきそうだということなのでしょう。

こういう活動が生まれたということはクラフトビールとそのシーンがマイノリティとマジョリティの狭間まで成長したという証拠であり、旧来のクラフトビールファンと何のこだわりもない層との間にいる、どっち付かずの消費者の囲い込み戦争が勃発したとCRAFT DRINKSは考えます。この戦争がどう終着するかはまだ分かりませんが、アメリカのビール市場は成熟したのだと言っても過言ではないのでしょう。少なくともマジョリティ化するかしないかの瀬戸際のフェーズにあることは間違いない。

日本においてはクラフトビールを定義しないまま来てしまい、世間的には高いものは全部クラフトになりつつあります。アメリカではこういう流れなので、日本ではどうなることやら・・・

CRAFT DRINKSはクラフトを「人の精神活動の表出に関する一形態」と今のところ捉えていて、それがビールに現れたものやその現象そのものもクラフトビールに含まれると考えています。本質は精神性にあるように思うのです。いつか私なりにまとめてみたいですが、果たしていつになるのやら。

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