クラフトビール観の相違について考えた

昨年11月、“craft beer”とは何だろう 連邦裁判所の見解とその衝撃という投稿をしました。それほど長くないものなので、是非お目通しください。本日はその続きなどについて書きたいと思います。

ConsumeristにJudge Dismisses Blue Moon “Craft Beer” Lawsuit Against MillerCoors (Again)という記事が出ました。結果だけ見れば上記に挙げた投稿と同じことになり、原告の訴えは棄却されました。これをもって今回の裁判は一旦終結となります。

中身を見てみると、気になる点があります。Brewers Associationの”Craft Brewer”の定義を援用して主張はしたものの、今回の争点については認められませんでした。クアーズ側の主張と結果はこうです。要点のみ記しておきます。

MillerCoors asked the court to dismiss the complaint, arguing that no reasonable consumer could have been misled by MillerCoors’ use of “craft beer” and “Artfully Crafted,” because — in spite of the Brewers Association’s definition — there is no widely accepted standard definition for “craft beer.”
ミラークアーズがブルームーンに”クラフトビール”等の表現を使用することで消費者の誤認誘導となることはない。”クラフトビール”の定義は広く一般に受け入れられていないからだ。

U.S. District Judge Gonzalo Curiel agreed, finding that no regulation bars MillerCoors from placing Blue Moon Brewing Co. on its label instead of MillerCoors. He granted the company’s motion to dismiss, without prejudice.
米国裁判所はそれを認めました。ブルームーンのラベルにミラークアーズと記載しなければならない規制は無いのです。

ざっくり言えば、全国民共通のクラフトビールの定義は無いからとりあえず問題ないですよ、ということ。認識が立場によって随分と異なるからこういう争いになるわけです。「定義は無いんだからいいじゃん」とか、「いやいや、BAの定義に沿っていないとダメだよ」とか、「地元のおっちゃんが手作りしているのがやっぱりクラフトなんじゃないの?」とか。「どーでもいいいよ、そんなの。安くて旨けりゃOK!」という人ももちろんいるでしょう。

私は前述の投稿でこう書きました。

「消費者に対する誤認誘導になる恐れがある」という意見もまだまだ根強く、この問題は未だ解決していません。今後さらに議論がなされていくでしょうし、それとは関係なくデファクトスタンダードとしての”craftbeer”が消費者の間に確立するかもしれません (下線は今回筆者が引いたもの)

少し概念的に言うと、クラフトビールという言葉の認識が「メガブルワリー・小規模醸造所・消費者」の3つのレイヤーで微妙に、もしくは大きくズレているということになります。クラフトビール観に相違があるわけで、この議論は裁判所を離れてこれからも続きます。もちろん思想の自由があるわけで、どこかの誰かに従わなくてはならないということはありません。BAの定義が絶対的なものでもないでしょうし、色々と難しいですが・・・でも、なんだか、こう、自分の中にモヤッとする何かがあるのは間違いない。

他人の意見はどうでもいいから、あなたにとってのクラフトビールって何ですか?

もしかしたら、遠回しにそう尋ねられてるのかもしれない。ここ日本でも絶対に議論しなくてはいけない点なのではないだろうか。