さて、そろそろ「流通と品質」の話をしよう①

クラフトビールという言葉が雑誌や書籍、webでもかなり飛び交うようになりました。「クラフトビールとは何か?」とか、「クラフトビールの定義は?」という議論もよく見かけます。CRAFT DRINKSでも幾つかそれらについて書いていますので、お時間ございましたら是非お目通しください。

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アメリカの英語のCRAFT BEERと日本のカタカナのクラフトビールには大きな隔たりがあるように思われます。国土も人口も、そして人の性質も違うのでそれは当然でしょう。それは別に構わないと思います。一人の消費者として素朴に思うのは、「まぁ、とりあえず難しいことはどうでもいいから、美味しいビールが飲みたいよね」ということです。恐らくこの点については皆さん納得して頂けると思います。

では、「美味しい」とは何か?これを語り尽くすことは本当に難しい。個人の経験やセンス、感覚だけでなく、社会的通念やライフスタイルなども関わってきますから、一生かかっても無理かもしれません。今回のシリーズではその中の一部だけを取り上げたいと思います。「流通と品質」です。

今まで多くのメディアがビールのことを書いてきました。個人のブログやSNSでもそうです。しかし、あまり「品質」については書かれてこなかったように思います。一番大事な部分であるはずなのに。大人の事情が色々あるのだろうと推察します。この部分については追って書きたいと思います。

私はものすごく評判の良い作り手の、ものすごく評価の高いビールを飲んでがっかりした経験を幾度と無く繰り返してきました。違う場所で飲むとまた味わいが違ったし、もっと酷いものに出くわすことも多々ありました。確実にガクンと品質が落ちている。作り手の腕は確かなはずなのに、何故だろう?

大手のビールは醸造所で一度に大量に生産されています。見学されたことのある方は「醸造所っていうより、工場だなぁ」と思ったのではないでしょうか。ビール産業は先行投資を前提とした装置産業です。労働生産性を高めることで製品を安価に提供できるし、製品の均一化を測ることも可能です。工業的側面も少なからずあるのです。

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とはいえ、ビールの原材料には「麦」や「ホップ」を使用します。これらは農産物で毎年作付も違いますし、成分も多少ブレますから仕上がったビールは毎回全く同じにはなりません。ビールには工業的側面もあるけれど、農産加工品的、もっと言えば生鮮食品的な側面も絶対にゼロにはなりません。

最近出回っているクラフトビール、特に国産のものは「無濾過」だったり、「非加熱」だったりします。賞味期限も3ヶ月を切るようなものもたくさんあります。ビールはワインや日本酒などの他の醸造酒より度数も低く、傷みやすい繊細なお酒です。工業製品的な取り扱いをしがちですが、本当はビールを上述のように生鮮食品だと思って扱わねばならないはずです。

ちょっと振り返ってみましょう。ビールを生鮮食品だと考えて扱っていましたか?生鮮食品であれば絶対にやらないようなことしていませんでしたか?

続きはまた。