Funkyなビール(2016/1/19 追記あり)

ファンキーと言っても、James Brownやsly & the family stoneじゃありません。ビールのお話です。とりあえず、カバー写真はゲロッパな感じにしてみました。sly & the family stoneはBGMとして聞いてください(笑)

ビールの表現で最近”Funky”(ファンキー)という言葉を聞くことが増えました。日本では全然聞きませんが、欧米の方とビールの話をするとよく出てきます。でも、その意味では辞書には載っていません。ここが結構大事な点です。

Funky(ファンキー)は特にサワーエールに対しての表現です。単に酸っぱいのではなく、酵母由来の馬小屋に近い香りなどを伴ったものに使用します。ランビックもそうですし、数年寝かせたオルヴァルなどもファンキーです。今までの経験上、似たような意味合いで”wild”を使う人もいました。ブレタノマイセス酵母入りのビールでもサワーで無ければ使わないように思われます。
この部分について「サワーでなくてもfunkyとする例がある」というご指摘を頂きました。獣臭の点に関しては共通しますが、そういう風味のするIPAやセゾンにも使われているそうです。使用する人のニュアンスで広義・狭義があると思いますので、一度精査したいと思います。誠に恐縮ですが、こちらの部分に関しては一旦保留とさせて頂きます。(2016/1/17 追記)

ここ数日調査を進め、北米在住の方などにコンタクトを取りました。幾つかの用法等から考えて、この件については「酸っぱくなくてもFunkyは使用する」と判断して良さそうです。ブレタノマイセス酵母由来の香りをポジティブにとらえた場合の表現であり、”brett”を”Funky”として使用するのが一般的とネイティヴの方に指摘されました。”horse blanket”、 “burnt hair” 、 “barnyard”などの語で示される風味とも強い関連が見られます。

さて、一点押さえておいて頂きたいことがあります。カナダの方から届いたメールで言われた非常に大事なことです。

English is a challenging language that way. Words have so many different meanings depending on context.(英語は挑戦的な言語です。言葉は文脈によって多くの意味合いを持つものです。)

今のところ前述したような意味で使用され、それが一定数の人間の間で共有されています。しかし、使う人によって、文脈によって意味に多少のブレやズレが生じるのは仕方ありません。たとえば”Funky”という語がもっと広範なものになって一般化するのか、他の言葉が台頭して絶滅してしまうのか、はたまた違ったニュアンスを含意して進化するか、誰にも分かりません。この投稿がいつまで血の通ったものであるかも分からないのです。とはいえ、「液体から感じる感覚を言語化する」という作業自体に意味があり、それは極めて人間的なものです。議論を重ねることこそが第一歩だと考えます。貴重なご意見を下さった皆様に心から感謝申し上げます。(2016/1/19 追記)

サワーエール関連で言うと、”acidic”や”tart”という言葉もちょこちょこ聞きます。味覚・嗅覚は人それぞれで感じ方が違いますから、言葉や表現もそれに伴って増えてきます。それと同時にシーンでも日々新しいビールが生まれ、スタイルや風味、そしてそれに関する言葉も常に新しく出てきます。クラフトビールシーンは辞書にインデックスされる前にまた新しいものが生まれる、新陳代謝の激しい世界なのです。

クラフトビールは英語圏中心に推移しているので、その表現や用語も英語に大きく依存するのは仕方ない。その分、決して日本のシーンを否定しているわけではありませんが、日本は言語的な問題によって情報が遅い。残念ながらそれは事実だと思われます。クラフトビールとインターネットは非常に相性が良いですし、googleやbingには翻訳機能もありますから、どんどん海外の情報を取っていくべきかと。「funkyなのも好きだけど、dankなヤツも嫌いじゃないな。」とか言ってみたいじゃないですか(笑)