ビールの物流 コモディティとしてのビール

先日、「生販三層」についてお話ししました。ビール産業においては非常に大事な点なのでぜひ一度リンク先をご覧ください。

さて、この「生販三層」は「大量消費」向きだと指摘しました。同時にこれは「大量生産」でないといけません。国税庁の発表する国産酒の課税出荷(日本国内で作って出荷された実績。飲まれたかどうかは関係ありません。出荷ベースです。)を見ると、25年度の実績はビールが三分の一を占めます。圧倒的です。日本で一番生産されているお酒はやっぱりビールなのです。このうち、そのほとんどが大手4社の製品です。コモディティ化した商品と言って差し支えないと思います。

コモディティ化は、市場に流通している商品がメーカーごとの個性を失い、消費者にとってはどこのメーカーの品を購入しても大差ない状態のことで、ビールはずっとそう認識されてきました。「いやいや、各メーカーごとに違いはある!」という反論もあるでしょう。しかし、どれも値段はほぼ同じで、どこにでもあって、タイプはピルスナーで決まっている状態はコモディティ化した言って良い。ビールは嗜好品だけれどもコモディティです。(「嗜好品とコモディティが両立する」という点にものすごく興味があって1o年以上こんなことばかり考えていますが、一向に飽きる気配がありません。)

コモディティ化の条件として「労働生産性が極めて高く、その結果売価が低い」ことが一つ挙げられます。ざっくり言うと、手間の割にはたくさん作れるということ。量に対して投下する資本が少なくて済む。製造原価が低いと言い換えることも可能です。コモディティ化した商品は競合する商品と差別化が難しいので価格だけで勝負することになり、その結果限界まで価格が下がります。

「無個性でどこにでもある大量消費型のコモディティ化した商品」としての大手ビール。それに対して、クラフトビールは全く逆でしょう。「個性的で、地元に根ざし、少量生産」です。大手に比べて安くないのは当たり前。なんとなくガブガブ飲むのではありません。単に酔う為でもなくて。クラフトビールとは「脱コモディティ化を目指すビール」と定義することも可能だと私は考えます。