“craft beer”とは何だろう 恣意的な条件変更とその意味

アメリカの醸造家の団体、ブルワーズアソシエーション(以下、BA)の”craft brewer”に関する定義を見ていますが、今回も量に関してです。
以前の投稿でご紹介した年間生産量に関する定義はよく引用されます。しかし、実は2010年まではこの定義ではありませんでした。あまり知られていないようなのですが、本当です。現在の600万バレルと設定される以前は年間生産量の上限は200万バレルだったのです。意図的に増量されたのです。それも三倍に。

BAが自身で発表しているデータを見てみましょう。
2010年の段階で醸造所は1625軒でしたが2014年には3000軒を突破。(2014年に定義の変更がなされていますが、それはまた別途書きたいと思います。)2015年現在、4000軒に達していて、物凄い勢いで醸造所が増え、生産量・消費量も増えています。2000年代から”craft beer”カテゴリーの伸張は眼を見張るものがあり、ここ数年は特に顕著です。これは”craft beer”が市民権を得てきたという証明なのですが、そこで大きな問題が発生することが2010年の段階で既に予想されていたのです。

このままだと人気の会社が年間生産量200万バレルを超えて、”craft brewery”の定義から外れてしまう・・・

以前、アメリカのThe Boston beer companyをご紹介しましたが、2014年の生産量は410万バレルです。定義を変更していなければとっくに超えている数字です。

“craft beer”の生産量が伸びていくことは悪いことではありませんが、”craft brewer”でなくなることは都合が悪いと考えたのではないかと推測されます。BAは定義を作り、”craft brewery”という概念を発明しましたが、それが流行とともに仇になってしまったのです。この改定は仲間はずれを自ら作らないようにする苦肉の策であったのではないか・・・そう思われて仕方ない。結果的にいわゆるBIG4以外は定義に外れていないので、年間生産量の改定は意図的だったのでしょう。

生産量は”craft beer”もしくは”craft brewery”にとって本質的には一切関係ないということを自身で証明したかのようにも見えるのです。