第7回読書会で読んだもの 振り返りと次回開催について

10月14日に第7回クラフトビール文献読書会を開催しました。3部制とし、2時間の枠を3つ設け議論したというのは前回までと同様です。イベントが多数開催されている3連休にもかかわらずご参加くださいました皆様、ありがとうございました。深くお礼申し上げます。

今回は初めての試みとして現役醸造家をお招きし、詳しくお話を伺いました。いらしてくださったのは立花薫さんです。立花さんはコロラド州立大学で醸造学を修め、オレゴン州にあるフォートジョージブルーイングで商業醸造に携わりましたが、コロナ禍で日本に帰国。帰国後はBlack Tide Brewingを経て現在Grandline Brewingにて醸造なさっている現役バリバリの若手醸造家です。アメリカでのクラフトビールの受容のされ方や今のシーンに関する雑感など話題は多岐に及び、非常に充実した時間となりました。個人的にはレシピを作る時の思考方法と順序に関するお話が興味深かかったです。

後日発表する本会の会報誌に詳細を載せますが、当日行った質問の一部を以下に列挙します。

① どのようなビールを作るかについて、ブルワーと会社の意見が合わないこともあると思います。合わない場合、ブルワーはどうするのか。日米の違いを教えてください。
②アメリカで人気のある日本のブルワリーや銘柄はありますか?また、日本のクラフトビールが海外で売れるためには何が必要だと考えますか?
③ 日本のクラフトビールの将来を考えたときに、ブルワー、設備、関連企業、法制度その他について危機感をもっていることや、もっとこうしたら良いのにと思うことはありますか?
④ 日本では国産のホップやモルトに関心を持つブルワリーが多くなっていますが、国産原料を使いたいと思いますか?また、アメリカでは国産、特に地元産原料に対してどのような意識があるのでしょうか?

続いて第2部です。第2部ではクラフトビールシーンにおける手詰まり感をテーマにThe Drink Businessの “What’s going on with the US beer industry?”を読み、アメリカ市場の今とそこで顕在化する動きを確認して議論しました。クラフトビール消費が落ち込む一方でハードセルツァーを筆頭にビヨンドビールがますます存在感を増しており、Craft Distillingへの関心も高まっています。(補論としてCraft Distillingに関する文章も読みました。)

拙著で予言した通り、サトウキビの糖分で発酵させるのではなく蒸留酒をベースにするハードセルツァーが目立ってきました。ビールに軸足は置きつつも隣接領域にも注目して小規模メーカーの動向を押さえていくのが現在最適なスタンスであろうかと思います。こういった潮流に関心のある方は拙著をご覧ください。

第3部では「国産ホップ」をテーマとし、課題図書として遠野市におけるホップ栽培の展開と「ビールの里構想」の試みを読み、議論しました。前回の国産モルトに引き続き国産原料を取り上げましたが、モルトにせよホップにせよなかなかしんどいと言わざるを得ません。詳細は上記でご確認頂きたいのですが、買い上げ契約が打ち切られたらどうするのだろう…と心配になったのは事実です。

また、議論では外国産ではなく国産であることの意義についても話し合いました。同資料からホップの単価が推測出来るのですが、海外産よりも高いのは間違いありません。そのため、ブルワリーが国産ホップを積極的に選択するならば下記のいずれかが満たされていなければならないと考えました。

①品質がより高いならばそれを示す客観的データ等を開示する②海外産とは明らかに異なる風味がある(代替性がない)

こうした説明がブルワリー界隈ではコンセンサスがあるのかもしれませんが、消費者の立場からだとよく分かりません。ただ単に「国産であること」ではなく、国産ホップの良さを是非詳細にアピールして頂きたいと思います。

さて、次回読書会についてですが、一点ご報告がございます。会議室の予約が取れなかったので残念ながら11月はお休みとなります。その代わりにこれまで参加して下さっている方々と初めて外に出て見学する計画を立てています。第2部で取り上げたCraft Distillingの流れでクラフトジンの蒸留所に行こうかと思っています。その模様は活動報告誌でお伝え出来たらと思いますのでお楽しみに。次回は12月となりますが、会場の予約等がまだ済んでおりません。確定次第お知らせ致しますので今しばらくお待ちくださいませ。

なお、弊会の活動報告書第2号が完成しました。11月3日に開催されるおもしろ同人誌バザールにて発表しますが、CRAFT DRINKSの本屋でも取り扱っておりますのでご興味ある方は是非。