“craft beer”と”クラフトビール” 雇用のこと

CRAFT BEERとクラフトビール。アルファベットとカタカナではどうにも違うような気がしています。たとえば、物流なども。
今回はビールの物流について少し書きたいと思います。

以前、ビールの物流 正販三層という投稿で「生販三層」というものをご紹介しました。少し引用してみます。

英語で生販三層のことを”three tier system”と言います。これは現代アメリカンクラフトビールシーンを考える場合、絶対に外せない大事なキーワードで、(中略)

生販三層とは「メーカー(もしくは輸入元)→問屋(卸)→小売」という流通の仕組、流れのことを指します。
ビールは多くの場合中間業者を通して流通し、その物流を効率化しています。各地の問屋さんにまとめて配送し、問屋さんが地元の酒屋さんに小さいロットで配送、そして酒屋さんが販売します。それぞれがその地域でハブ機能を受け持ち、効率を上げています。

仕組み自体はこういうもので、まずここは押さえておいてください。ここで日本とアメリカの違いを指摘しておかねばなりません。大きな違いがあります。

①日本は免許の性質上、「問屋に卸す」こともできるし、「小売への直販」も出来ます。これに対してアメリカでは「小売への直販」は出来ない仕組みになっている点。問屋に出すのがルールです。(最近一部例外や是正の動きがありますが、今回はややこしくなるので触れません。大原則として「直販NG」です。)
②日本では地域的な制限がかけられていないので、醸造所は日本全国どこの問屋や小売にも販売可能。これに対してアメリカでは州ごとに問屋が個別に必要である点。

なぜアメリカは一軒の問屋さんや酒屋さんに全国規模で展開させない仕組みにしているのか?これは政策として「地域の雇用を増やし守るため」ということも理由の一つに挙げられるでしょう。各地域の産業として醸造所、問屋、小売がそれぞれ独立して存在するから雇用がたくさん生まれます。日本ではあまり語られることのない視点だと思いますが、とても大事なことだと思います。
クラフトビールがCRAFT BEERに倣う必要は全く無いのですが、免許緩和から20年以上経ち、新たなステージに向かう日本において「クラフトビールと雇用」に関する議論があっても良いと思っています。