どこのレッドエール?

説明が少なすぎる。担当者出てこい、と言いたくなる。ネーミング詐欺でしょ、これは。
いきなり怒ってすみません。最近、「レッドエール」について少々怒っているのです。

ビール、大好きなんです。正確にいうと、美味しいビールが大好きなんです。国やタイプにはこだわりません。質が良ければ何でも美味しく頂きます。

でも、ラベルを見たり、メニューを見ただけでは質のことはなかなかわからない。飲んでみるしかない。そこで「ビアスタイル」というものを参考に、「こういう傾向だろうなぁ」という予想をします。IPAだったら「しっかり苦いだろう」、ランビックだったら「度数低めで酸っぱいだろう」という具合に。

最近の日本のクラフトビールシーンはアメリカの影響が非常に強く出ていて、幾つかの国内醸造所が「レッドエール」というものを発売しています。これが結構くせ者で。是非一度googleで検索してみてください。検索結果の最初に出てくるのは「ベルギー発祥のフランダースレッドエール」もしくは「アイルランド発祥のアイリッシュレッドエール」が大半です。前者は酸味の強いもの、後者は低アルコールのモルティなもの。どちらもホッピーではありません。しかし、「レッドエール」という名で現在発売されているものの大半は相当ホップが効いていて、苦い。全然違う。ヨーロッパのレッドエールだと思って飲んだらビックリします。

クラフトビールの世界では幾つかの”red ale”が存在していて、日本ではそれぞれについてまだちゃんと説明されていないからこういう混乱が起こるのです。醸造所はこの部分を初めての方にも分かるように説明してほしい。

「レッドエール」と言った場合、考えられるのは以下の3つです。

・Flandres Red Ale
・Irish Red Ale
・American Style Red Ale

苦いのは最後のAmerican Style Red Aleです。こちらがどういうものか、アメリカ最大のビール品評会”Great American Beer Festival”(略してGABFとも)のガイドラインを参照してみます。

American-Style Amber/Red Ale
American-Style Amber/Red Ales are copper to reddish brown. Chill haze is allowable at cold temperatures.
Fruity-ester aroma is low if present. Hop aroma is medium. Medium-high to high maltiness with low to medium
caramel character is present. Hop flavor is medium, and characterized by American-variety hops. Hop bitterness is medium to medium-high. They may have low levels of fruity-ester flavor. Diacetyl can be absent or barely
perceived at very low levels. Body is medium to medium-high.
Original Gravity (ºPlato) 1.048 – 1.058 (11.9 – 14.3) ● Apparent Extract/Final Gravity (ºPlato) 1.012 – 1.018
(3.1 – 4.6) ● Alcohol by Weight (Volume) 3.50% – 4.80% (4.40% – 6.10%) ● Bitterness (IBU) 30 – 45 ● Color
SRM (EBC) 11 – 18 (22 – 36)

色や香り、味わいについて色々と書いてありますが、「アメリカンスタイルアンバーエール」の別称が「アメリカンレッドエール」だということが最初の一文で分かります。なーんだ、そういうことか。アンバーエールのことなのね。赤くないけど、レッドエールなのか。ふんふん、なるほど。
・・・Flandres、Irish、Americanという言葉をつけるだけで解消される問題なのだから、そこは省略しないで頂きたい。

言葉は広く浸透していくにつれ、認識の前提となり、文脈が共有された時に省略が可能です。レッドエールと言った時に「アメリカンが筆頭だ」という意識が提供側にあるのかもしれません。American Styleがデフォルトですか、そうですか。しかし、日本のクラフトビールシーンはまだまだ始まったばかり。文化として根付いたとは言いがたい。つまり、まだ多数の人間の間で前提が共有されていない。googleでも「レッドエールといえばアメリカンレッドエールもありますよ」と教えてくれない状況なのだから、もう少しだけサービス精神を出してくれても良いのになぁ、と思ったりします。そういうおせっかいは大歓迎です。